児童の犯行と考えて内部検証を続けてきた

 学校関係者によると、本来の勤務時間は午前8時15分から午後4時45分まで。同小では午後10~11時ぐらいまで残業する教員もいる中、井上容疑者は午後8~9時には退勤することが多かった。ただ、出勤はいつも同容疑者が一番乗りだった。

「毎朝5時に登校していました。授業の進め方も上手で、知識を教え込むだけでなく、子どもの考えを引き出すのがうまかった。何らかの不満があったのかもしれませんが、相談などはなく、事件は残念でなりません」(前出・校長)

 小学生のことだけに、すべての紛失例が事件性をはらんでいるとは限らない。それにしても学校で学用品がなくなることが多すぎるし、落書きは明らかに故意。なぜ学校は約100件も累積するまで警察に相談しなかったのか。

 市教育委員会の関係者は現場の苦悩をこう打ち明ける。

教師が犯人とは誰も想像していなかった。隠されたモノや落書き内容を見ると、児童がやったと考えるのが自然で、こういう行動を取る児童やクラス内のいじめを心配し、内部検証を続けてきた。

 しかし、気になる点を改善しても解消せず、井上容疑者も一緒になって考えたり、なくなったものを探していたらしい。真相を知ったときはショックで涙ぐむ教員もいた」

近所の住民の評判は「とってもいいパパ」

 井上容疑者は東京・八王子市の出身。2017年4月に赴任する以前は産休の代替教師を務めたり、私立小で教鞭をとっていた。

 前出・市教委関係者によると、転職の理由について、

「私立小は受験対策がメインなので、公立で学級運営に力をそそぎたい」

 と熱意をみせていた。

 日野市の自宅から片道約20キロのマイカー通勤。赴任当時は府中市のアパートから通っていたが、約半年後、3000万円弱のローンを組んで中古の2階建て住宅を購入。妻と幼い娘2人と暮らす。

 近所の住民は「夫婦円満で、とってもいいパパ」と話す。

「夜明け前の午前3~4時ごろ起きて出勤し、帰宅も午後9~10時と遅い。休日には娘さんと川沿いを散歩したり、家族で外食に出かけるなど身体を休めようとしなかった」