犬たちの今後はどうなる?

 西原代表によると、一家は毎日8〜10キログラムの袋入りのエサを2袋与え、ほかに炊いたご飯や煮た野菜も与えていたという。

「コントロールできない頭数まで増えてしまったが、犬たちの穏やかな表情をみるとそれなりに愛情をもって育てられたことがうかがえます。病気になれば動物病院に連れて行っていたため、病院には莫大な量のカルテがあるらしい。飼い主一家も正確な頭数は把握できていませんでしたが、140匹ぐらいには名前をつけてかわいがっていました」(前出の西原代表)

 例えば、寄り目ならば「よりちゃん」といった具合に。近親交配のため顔つきがよく似ているにもかかわらず、名前を聞き返しても間違えることはなかったという。

「新しい飼い主さんにも割とすぐ懐くのではないかと思っています」と西原代表。

 現在、『どうぶつ基金』が費用負担して全頭の不妊・去勢手術を行っている最中だ。一家は犬の譲渡にも理解を示しているという。

 地元のNPO法人『アニマルレスキュー・ドリームロード』の原ゆかり代表は言う。

「うちで預かっている犬はみな元気です。妊娠していた2匹は10月末と11月頭にそれぞれ無事出産し、子犬につきっきりで面倒をみるなどいいお母さんをしています。飼い主さんなりに犬をかわいがり、1匹も捨てていないし、保健所に連れていくこともしなかった。精神的に参っているのでもう誹謗中傷はやめてあげてほしい」

 一家は周辺住民に対し、迷惑をかけたことを詫びる反省文を配布している。迷惑をこうむっていたのは犬たちも同じ。たとえ愛情をもって接していたとしても、エサが足りずに飢えたり、窮屈な生活をおくるようでは幸せだったとは言い難い。スムーズに再出発できることを祈りたい。

 地元の動物愛護団体はさきごろ、今回の多頭飼育犬に新たな飼い主を見つけるためのWebサイト(下記参照)を立ち上げた。

「まだ犬の情報は掲載しておりませんが、準備を整えて随時掲載し、犬たちに新たな家を見つけてあげたい」(島根動物愛護ネットワークの西原代表)という。

◎取材・文/渡辺高嗣(フリージャーナリスト)

〈PROFILE〉法曹界の専門紙「法律新聞」記者を経て、夕刊紙「内外タイムス」報道部で事件、政治、行政、流行などを取材。2010年2月より「週刊女性」で社会分野担当記者として取材・執筆する

※この犬たちが幸せに暮らせるよう、里親になりたい読者は以下まで問い合わせを。

島根県出雲市・犬多頭飼育崩壊レスキューWebサイト(問い合わせフォームあり)
 https://www.dog-rescue-izumo.info/index.html

NPO法人「アニマルレスキュー・ドリームロード」(原代表)
 TEL 090・3742・7334
(もしくは団体フェイスブック https://www.facebook.com/izumo.animal へアクセスを)

「島根動物愛護ネットワーク」(西原代表)
 TEL 080・5478・6522(もしくは nori@s-apn.org へメールを)