――トイ・ストーリーの後もヒット作が続いた理由は何でしょうか。

 ピクサーには、いまでもトイ・ストーリーの「魂」がある。今でもどの部門にも必ず1人は、当時のことを知る社員がいるんです。そこでいろいろな話をして、「魂」が継承されます。

ピクサーにはトイ・ストーリーの魂が根付いている(『トイ・ストーリー』(c) 2020  Disney/Pixar ディズニープラスで配信中)/東洋経済オンライン
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 トイ・ストーリーの魂とは、私の解釈で言うと「妥協しないこと」。知らないことを怖がるより、ワクワクしたほうがいい。挑戦したほうがいい。そして最後まで妥協せずに、自分たちが納得のできるものを作り上げる。

 今は「トイ・ストーリーを見た」という人が入社してきますが、入社のときにも社長が当時の話をよくします。ランチを一緒にしながら話すこともあるのかな。ピクサー・カルチャーはそうやって引き継がれています。

 最初からヒットを狙うことはないです。ストーリーが一番で、それが固まっていない作品は、絶対に誰も推さない。社員の意見を聞くことも多いです。社員が1200人いれば、1200の意見がある。そうした意見も反映しながらストーリーが固まったときに、はじめて「じゃあこれをやりましょう」ということになります。

「タイムレス」を追求する

――日本人として働く大変さはないですか。

 日本人はいま3人いるのかな。とにかく感じるのが、日本のアニメがものすごく尊敬されているということ。同僚からは日本のアニメについてよく尋ねられますね。ジブリ、ポケモンなど年代ごとにファンがいます。世代ごとの感じ方があって面白いですよ。

――今後に向けて、社内ではどんな話をしていますか。

ピクサーの次回作は、生まれる前の魂(ソウル)の世界を描く(『ソウルフル・ワールド』(c)2020 Disney/Pixar 12月25日(金)ディズニープラスで配信)/東洋経済オンライン

 私たちが追求しているのは、「タイムレス」です。末永く見てもらえる作品を届けたい。みなさんが共通して感じる世界観といいますか。そして、そのうえにダイバーシティ(多様性)を加える。その意味では、トイ・ストーリーのときと課題は同じです。

 経営陣は変わりましたが、スタッフ同士は創業時とまったく変わっていません。変わらないピクサー・カルチャーをベースにしていますから。

 ピクサーにいると、自然と「何かしたい」という気持ちになれるんです。25年間いても、まったく飽きない。今は新型コロナの影響で、テレワークが中心ですが、テレワークでもぜんぜん飽きません。カメラを通して同僚とはしっかりコミュニケーションがとれています。これからも「タイムレス」な作品を生み出していきたいですね。


並木 厚憲(なみき あつのり)東洋経済 記者
これまでに小売り・サービス、自動車、銀行などの業界を担当。テーマとして地方問題やインフラ老朽化問題に関心がある。『週刊東洋経済』編集部を経て、2016年10月よりニュース編集部編集長。