国内では2月に横浜港に入港したクルーズ船ダイヤモンド・プリンセス号に端を発し、いまなお収束の気配が見えない新型コロナウイルス。未曾有の事態に直面したこの1年を振り返り、タレントのフィフィは日本政府の対応のお粗末さを鋭く指摘する――。

* * *

 日本国内で言えば、当初はダイヤモンド・プリンセス号の時点でもっと封じ込めができると思っていました。2020年1月の訪日中国人旅行者数は、98万4800人と1月としては過去最高人数だったそうです。

 そうこうしているうち、WHOによってパンデミックが宣言され、非常事態宣言が出され……。そして、この日本でも緊急事態宣言が出され、ロックダウンの可能性まで示唆されるなんて想像していませんでした。学校が休みになり、街からは人がいなくなってゴーストタウン化して……まるで映画のなかの世界にいるようで。

Go Toキャーンペーンも……

 同時に、世界の国々と平和ボケした日本とでは、政府の危機管理能力がまったく違うということを見せつけられてしまった一年でもありました。最近では『Go To トラベル』キャンペーンを全国で一時停止することが決まりましたが、それも12月28日からでしょ? なんでそんなに遅いの? って。止めるって決めたら、その日か次の日にやるべきじゃないでしょうか。

 たとえば、イギリスでウイルスの変異種が出たら、各国すぐにロックダウンを再開したでしょ? 国民の生活、健康を守るために、クリスマスという大事なホリデーもお構いなしで、政府がズバッと決断するわけです。

 一方、コロナを巡る一連の日本政府の行動を見ていると、まず決断力がない。まるで頼れません。旅行を推進したのも打撃を受けた地域産業の活性化のためなのかといえば、それだけでもないんじゃないかと思います。

 そもそも『Go To キャンペーン』政策は、全国的で大掛かりであるものの、実施する委託先の公募が5月26日〜6月8日までとかなり短期間。そして、この事業を引き受けたのが『持続化給付金事業』にも関わっていた大手広告代理店が出資する会社だったという背景に、オリンピックや大企業の利権の影が見え隠れしていますよね。あらかじめ仕組まれていたんじゃないかと。

 たまたまオリンピックという大きなイベントに巨額の投資しているなかで起きた不測の疫病ということで、運が悪いなとは思うけど、あまりにもそれに左右された対策しか政府はとっていないようにも見えてしまいます。

 そして国民には年末年始の自粛を求めるかと思えば、相変わらず空港の水際対策はゆるゆる。矛盾しているよね。11月1日からは入国の規制緩和がされましたが、NHKの報道(12月5日)によるとビジネス目的を含む外国人の短期滞在は全体の1割にも満たない1割弱ほどしかいなかった。ビジネスが少数の反面、留学や技能実習生は多くの割合を占めており、人種別にみると全体の約6割が中国人とベトナム人。実のところ、規制緩和は低賃金の労働力の確保が目的なのでしょう。

 いま問題になっている医療現場の逼(ひっ)迫にしても、冬になったら患者が増加することは前からわかっていた話。コロナに対応するための第2次補正予算は6月に閣議決定されていたわけで、感染症専門の病院を用意するなり人員を確保するなり、時間もお金もあったはずなのに、政府は何をしていたの? と思わずにはいられません。いずれにしても、いったい誰に向けての政策なのか――国民のための政策を講じているとは思えないです。

 菅内閣に政権交代して、国民は決断力やスピーディさに期待したわけです。だけど実際のところ、現状では全然ダメ。それが支持率の下落として表出しているんだと思いますよ。政府がこんなにひどいのに、日本がGDPで未だ世界第3位なんて、これはひとえに日本国民の勤勉さが支えているだけ。みんなきちんとマスクをして、自粛をしろと言われたら自粛をして……本当に偉いと思います。それに引き替え、つくづく政府の対応には情けなくなった一年でした!

〈構成・文/岸沙織〉