東京・町田市の小田急線・玉川学園前駅で、昨年11月28日午後11時過ぎ、無職の母親と職業不詳の娘が特急電車に並んで飛び込み死亡。ホームで約1時間ためらった末だった─。

 身元が判明すると、母娘の奇妙な日常が見えてきた。

娘さんが夜遅くに突然訪ねて来て“お金を貸してください”と粘るんです。根負けして1万5000円貸すと、数日後に返済し、また貸してほしいという。断ると今度は母親が来た。結局、貸した2万円は返ってきませんでした

 と、母娘と同じマンションの住人は話す。

 断ると、娘は「じゃあ、コンビニのATMで下ろしてきてもらえませんか」と迫ったという。

“せめて娘を連れて”

 自殺した駅から3つ先の駅から徒歩約15分。神奈川県座間市の小規模マンションでふたりは暮らしていた。2DKで家賃は月4万円前後。

 約6年前に引っ越してきたが、当初から娘の振る舞いは奇異だったという。

娘さんはマンションの玄関口で酒を飲んだりタバコを吸いながらツバを吐いたり。風呂に入らないのかニオイがきつく、髪の毛は脂でギトギト。行きつけのパチンコ店では有名だった。目をランランとさせて自分の世界に入っていたり、ひたすらボーッとしていたり」(別の住人)

 母親はそんな娘について、

「昔は頭がよくて、学校で教師をしていたんだけど精神を病んでしまって」

 と、かばうように話した。

 母娘が近隣宅に無心をして、踏み倒すようになったのは2〜3か月前のこと。

10万円貸した人もいる。1度、借金を返してから“近く遺産相続で4億円入るので収入印紙代や弁護士費用を貸してほしい”と、より高額な借金を頼む手口。病気療養中の人にも“100円でいいから貸して”と、しつこく、その人は“100円あげるからもう来ないで”と言ったそう」(同)

 それまでは母親の年金で切り詰めた生活を送っているようだったという。

 母親は、ウォーキングする姿が何度も目撃されていた。「テレビで紹介された食べ物をすすめてくれるやさしい方でした。“お金を貸してほしい”と言われたときは驚いて……」(近所の住人)

 娘は早朝に出かけ、働いていた時期もあったようだが、変わったのはここ1年。パチンコ店でも見かけなくなった。

「夏ごろから昼間にぶらぶら歩く姿をよく見かけるようになったので、コロナ禍で失職したのでは」(同・住人)

 冒頭の住人は母娘の死後、思い出したことがある。

自殺前の2週間くらい、ほぼ毎日のように午前3時ごろ母娘でどこかに出かけ、約2時間後に帰宅していたんです。

 死に場所を探していたのではないか。娘さんが自殺を提案するとは思えない。母親は娘さんを守るように生きていたから、この先の生活を悲観して“せめて娘を連れて”と考えたのではないか」

 近隣住民らが把握している母娘の借金総額は10数万円程度。命を絶つ額ではないようにも……。

 自殺から約1か月後、母娘宅には整理業者が入り、布団やソファなどが廃棄処分された。部屋の前には、近所のスーパーで値引き購入したとみられる「めかぶ4パック」の包装が落ちていた……。