こんなときだからこそ笑ってほしい

――コロナ禍での舞台公演は?

渡辺 マスクをして稽古をするというのはつらかったです。表情がわからない。通し稽古でマスクを取ったときに初めて「あ、こんな顔なんだ」とわかる。スタッフの顔もずっとわからないというのも初めての経験でした。でも逆によかったのは毎回、死ぬ気でできることですね。毎回、稽古も最後のつもりで悔いのないよう1日1日を死ぬ気でやる。

 (コロナ禍)以前は1か月の稽古は、最初はラフに入って、徐々に進んでいました。コロナ禍では、明日はどうなるかわからないから毎日、死ぬ気です。集中力がすごいですね。いい意味で焦りながら早く作っていく。せっかちなタイプの私には向いているのかなと思います。

八嶋 最初のころは責任の所在は、継続するのも中止するのもわれわれにあった。でも、だんだんガイドラインがしっかりしてくると、それに則ってやればという状況になった。劇場側も、しっかりとコロナ対策をしていて、そこに集まってくるお客様も真剣に感染予防をされている。

 私語は慎んで静かな時間も多いけれども、(芝居が)終わったときの拍手は(観客数は)今までの半分以下なのに、変な言い方ですが、とても分厚いんです。えりさんも僕もウィズコロナの状況になってから舞台に立っていると、それがよくわかるんです。

 もしかしたら自粛期間中に喜劇をやるのは不謹慎だと思った方もいるかもしれない。でも、楽しい時間を安全に過ごすために、稽古も本番も(感染防止の)対策を万全に取りながら行っています。喜劇と銘打った芝居ができる喜びを感じながら、みなさんに存分に楽しんでいただきたいです。

渡辺 こういうときだからこそ心から楽しんでいただきたいですし、お客様に笑っていただきたい。笑うことは免疫力を上げるともいわれているので、自然治癒能力を活性化させる意味でも大いに笑っていただきたいです。

共演がうれしいワケ

 写真撮影の雑談では、こんな会話も。

渡辺最近、町田啓太にハマっちゃっている。彼が出演したBLドラマ(『30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい』)、ネットフリックスの『今際の国のアリス』も町田君目当てに見たほど」

八嶋彼とは映画で共演して連絡先を知っていますよ」

渡辺「えっ、そうなの? 教えてもらってもいい? よかった、八嶋君と共演できて」


八嶋「なんですか、それ(笑)」

舞台『喜劇お染与太郎珍道中』 (2月1日~17日東京・新橋演舞場、同21日~27日京都・南座)

【物語】江戸の米問屋の箱入り娘・お染(渡辺えり)は、恋仲の若侍・重三郎が京都藩邸に転勤に。さらに大名家から妾になるよう迫られたお染は、重三郎を追って京都に向かう。お付きに選ばれたのはおっちょこちょいの手代・与太郎(八嶋智人)。表向き夫婦として五十三次を旅するお染、与太郎のドタバタ珍道中。

渡辺えり:ヘアメイク/藤原羊二 スタイリスト/矢野恵美子 衣装/アクセサリー:アビステ
八嶋智人:ヘアメイク/国府田雅子(Barrel)、スタイリスト/久 修一郎(impiger)、衣装/すべて BLUE BLUE JAPAN(OKURA)