カツラもカミングアウト済み

 とはいえ、寄る年波には勝てない。彼にはカツラ疑惑というものもあり、講演会や雑誌ではすでにその使用をカミングアウトずみ。だが、テレビで公表しないのはやはりいじられたくないのだろう。

 また、13日の放送では「ちょっと切っ先が弱くなって」とこぼしたが、実際、キャスターとしてはカウンター的な攻めのスタンスが売りだった。'92年から'99年にかけては、現在『ノンストップ!』が放送されている枠で『ジョーダンじゃない!?』『どうーなってるの?!』を成功させ、これが『とくダネ!』につながる。いわば日常にチャチャを入れるという、ツッコミ芸でのしあがった人なのだ。

「ボケてるんじゃないか」と言われては立つ瀬がない。

 まして、スポーツの知識や経験を生かせるはずだった東京五輪は延びるわ、へたしたら中止だわ、仲よしの嵐は予定どおり活動を休んじゃうわ、ときた。そんなときに「老害」呼ばわりされたら、自分がもう用ずみだと感じてしまっても無理はない。

 そういえば、16日放送の『たけしのこれがホントのニッポン芸能史』(NHK BSプレミアム)の海外ロケ番組特集で『世界まるごとHOWマッチ』(TBS系)が紹介されていた。彼のナレーターとしての代表作だ。あの甲高い声を久々に聞き、そこから30年以上たった今、こういう声はもう出せないのではと思ったものだ。

 ただ「そろそろいいのかな」と身を引いた小倉以上に、もういいのではと感じさせるキャスターやコメンテーターもいる。そういう人に限ってなかなかやめないのは「まだまだ大丈夫」と自分で思っているからだろう。

 本物の「老害」や「ボケ」とはむしろ、そっちかもしれないのに。

PROFILE●宝泉 薫(ほうせん・かおる)●作家・芸能評論家。テレビ、映画、ダイエットなどをテーマに執筆。近著に『平成の死』(ベストセラーズ)、『平成「一発屋」見聞録』(言視舎)、『あのアイドルがなぜヌードに』(文藝春秋)などがある。