受刑者を雇う企業の本音と葛藤
冒頭の朝倉さんのように家族に縁を切られ、刑務所を出ても身元引受人がいない人は多い。仕事が決まれば雇用主が引受人になれるのだが、理解のある職場は少ない。
国も努力はしている。出所者を雇用し更生に協力する民間の事業主を「協力雇用主」と呼び奨励金を出している。
2019年時点で約2万2千社の登録があるが、実際に雇用しているのは約950社にとどまる。刑務所だけでも年間約2万人の出所者がいるので、圧倒的に足りない。その結果、再犯をして刑務所に戻った人の約7割は無職だったという現実がある(平成30年『矯正統計年報』)。
どうにか就職できても、途中で辞めてしまうケースが後を絶たない。定着率の高い廣瀬さんの会社でも5割前後だという。
「やっぱり孤立している子のほうが飛びやすいので、もっとこっちからガツガツ話しかけたほうがいいのかなーとか、何がいけなかったのか考えて眠れなくなっちゃったり。よくひとりで泣いてます」
悩んだときは、三宅さんに電話で相談する。
いつもじっくり話を聞き、一緒に怒ってくれ、こう励ましてくれるそうだ。
「廣瀬社長のやってることは間違ってません」
こうした取り組みを知ってもらうため、三宅さんは全国の刑務所、少年院、民間団体などに出向き、講演もたくさんこなしてきた。テレビや新聞などの取材も積極的に受けている。
努力の成果もあり、同誌は創刊以来ほぼ黒字だが、三宅さんは一切、報酬を得ていない。生活費は納棺師の仕事でまかなっている。
一体、何が三宅さんを突き動かしているのだろうか。
「私、ダメ人間なんですよ、本当に。マザー・テレサみたいに言われることがありますが、全然、そういうのじゃない。いろんな人に迷惑をかけて生きているので、ダメな自分をちょっとでも許してほしいとか、昔やらかした悪さがちょっとでもプラマイゼロになるといいなーとか。エゴと言ってもいい。自分のためにやっているんです」
実は三宅さんも、かつては非行少女だった。新潟市に住んでいた中学時代、友人の家に不法侵入して大金を盗んだこともある。友人は三宅さんが犯人だとわかっていたが、問い詰めなかった。それを25年後に返済して謝ったそうだ。
「新潟は狭い町なので、帰省するとその子とばったり会ったりします。そのたびに魂が曇る感じがして……。20代のときも返そうと決めてお金も用意したけど、警察に突き出されるかもと勇気がしぼんでしまったんです」
やってしまったことが消えるわけではないが、友人がゆるしてくれたことで心の曇りはなくなった─。