ケース3:お茶くみで叱責、逆効果な世話焼き

「“お茶くみは女子社員の仕事”って、いつの時代の話って感じですよね」

 ため息まじりに語るのは、税理士事務所の事務員、後藤綾乃さん(30代・仮名)

 これは1年ほど前、綾乃さんの勤務する事務所に急な来客があったときの出来事だ。

「私は電話に対応中だったので、ほかの男性スタッフが客人を応接室に案内してお茶を出してくれていました」

 それを見た50代の女性課長は大激怒、綾乃さんは給湯室に呼び出しをくらった。

「“なんで男性社員にお茶を出させるの! あんたの仕事でしょ!”と叱られました。声はフロアに筒抜け、男性スタッフもバツの悪そうな顔をしていましたね」

 さらに別日の昼どき。

「私が自宅から持参してきたお弁当を食べていたら、その課長が“栄養バランスが悪いわね、そんなに料理がヘタだと結婚できないわよ!”と言ってきたんです」

 後日、綾乃さんのデスクにはレシピサイトの切り抜きが束になって置かれていた。

「どうも彼女には世話焼きな一面があるようで、よかれと思ってやっていたのかも。とはいえ、あまりに古い価値観を押しつけられるのはまっぴらですね」

「あなたのため」は実はパワハラ!

 前出の奥田さんは、

「前後の文脈にもよりますが、上司の“あなたのためを思って”という言葉の背後にある思い込みが『無自覚パワハラ』につながるケースも多い」

 過去に奥田さんが取材した中でも、この無自覚パワハラは散見されたという。

「40代の課長職の女性が30代の女性部下に、“あなたは管理職候補で期待しているから、いま出産は控えたほうがいい”と言い、セクハラ混合のパワハラで訴えられてしまいました。上司として、よかれと思って言った言葉ですが、言われた側はひどく苦悩したようです」

 労働問題に詳しい明石順平弁護士は次のように語る。

「同性間でも、その行為に不快感を持っていれば、セクハラパワハラにあたります。意図せずハラスメントの加害者にならないためにも、誰しもが“加害者になるかもしれない”という加害者性を常に意識することが大切ですね」

 さらに奥田さんは、

「女性管理職には、ジェンダー問題や感情コントロールの学び直しや価値観のアップデートが求められますね。女性管理職のスキル不足を責めるのでなく、企業側が人材育成の制度を充実させることも喫緊の課題。社会全体の問題として取り組むべきです」

 各国の男女差を測るジェンダーギャップ指数が先進7か国最下位の日本でますます望まれる女性の指導者たち。男女平等を推し進めるためにも、自らの加害者性には自覚的でありたいものだ。