こじんまりとした、ゆりかもめの車両
こじんまりとした、ゆりかもめの車両
【写真】“狭さ”を感じる「ゆりかもめ」の車両

「ゆりかもめ」は、新橋から竹芝、芝浦ふ頭と沿岸部を走り、自動車と並行しながら、半径の小さいループを駆け上がり、レインボーブリッジを渡って「お台場」に至る。

 新交通システムの「ゆりかもめ」は、ゴムタイヤで走り、車両も小型なので、一般の鉄道と違って自動車のようにカーブや勾(こう)配に強い。

 その反面、6両編成で定員300人程度なので、輸送力では一般の鉄道に大きく劣る。10両編成で定員1,500人超の「りんかい線」と比べれば、20%ほどの輸送力しかない。

 しかも、最高速度は60キロと遅く、ルートは直線ではない。途中駅の「有明テニスの森駅」は、テニスや体操の競技会場の最寄り駅だが、新橋駅から25分もかかる。

 新橋駅から東海道線に乗れば、横浜駅まで22分である。つまり、直線距離は短くても、お台場は横浜よりも遠い場合がある。「ゆりかもめ」は新橋駅が始発駅で、乗り換えが面倒なことも含めれば、実際に所要時間は長いし、体感的にも遠く感じる。

 輸送力が少ない「ゆりかもめ」は、乗客が増えると混雑が激しくなる。

 新橋方面は、「有明テニスの森」などで多くの人が乗車すると、途中駅からの乗車が難しくなり、激しい混雑になる。しかも、それが新橋駅に着くまで長時間続く。苦痛なだけでなく、新型コロナウィルスへの感染リスクも懸念される。 

観客もメディアもスタッフも大移動

 ところで、誰が公共交通機関を利用するのか。

 大会関係者は、公共交通機関を利用する前提はなく、基本的には専用バスなどで移動する。選手だけでなく、オリンピック委員会、国際競技団体、メディアなども、その対象に含まれる。

 晴海ふ頭の近くに設置される選手村は、そもそも交通の便が悪い。そこから競技会場、練習会場、および出入国地点となる成田空港、羽田空港などへは、専用バスが走る。選手の輸送は確保されており、公共交通機関への影響はない。

 メディアは、IBC(国際放送センター)、MPC(メインプレスセンター)が東京ビッグサイトに設置されるが、そこから競技会場やホテルなどへは専用バスが走る。

 ただ、現時点で公表されている計画では、メディアが練習会場に移動したり、空港からホテルに移動したりする場合など、公共交通機関を利用する想定もある。

 国際競技連盟の関係者も、ホテルと開閉会式の会場の間を移動するケースなどで、公共交通機関を利用する。 

 大会関係者でも、現時点の計画では、一部は公共交通機関を使うのだ。

 東京オリンピックでは、選手数が11,000人、メディア数が25,800人の予定なので、メディアの方が多い。海外から来る選手に注意が向きがちだが、感染症対策の観点では、メディアの行動にこそ注目すべきだろう。