朝ドラのキーパーソンを担うジェンヌたち

 ジェンヌたちは歌劇団に入団する前に音楽学校で2年間、演技はもちろん歌や所作などを学ぶ。映像とは表現方法が違えど、根本にある演技についてはベースがしっかりしているのだ。

『虹を織る』では春風かおるという芸名のジェンヌ役で出演した大地真央
『虹を織る』では春風かおるという芸名のジェンヌ役で出演した大地真央
【写真】故・乙羽信子さんなど、歴代朝ドラに出演したタカラジェンヌたち

「出演シーンそのものが多くなくても、インパクトのある役、重要なポジションを担う役を演じることが多いです。

 例えば'19年から'20年にかけて放送された『スカーレット』での紺野まひるさん。彼女は『てるてる家族』にも出演していますが、『スカーレット』では戸田恵梨香さん演じるヒロインの作った器を、大量発注する職業夫人を演じました。ヒロインの才能を見いだして、陶芸家になるきっかけを作る大切な役でした」(田幸さん)

 同じようにヒロインの人生の転機になる役を、野々すみ花が演じたのは'15年の『あさが来た』。

「波瑠さん演じるあさの夫で、玉木宏さんが演じた、新次郎の三味線の先生。色っぽくて初めは浮気相手と思われていたけど、実は時代の先端をいく職業夫人。彼女の経営するレストランに勤めている女性を見て、あさが女性銀行員の採用を思いつくきっかけになりました」(田幸さん)

 今回の『おちょやん』でも明日海りおの、カメラ目線での演技が話題になった。

「あれはインパクトがありました(笑)。でも、そういう演技がちっとも下品にならない。品があって威厳があって、美しいのに笑えるんです。こういった力は“清く正しく美しく”というモットーで舞台に向き合っている、タカラジェンヌならではですよね」(田幸さん)


たこう・わかこ ドラマコラムの執筆や、ジャニーズウォッチャーとして活動。著書に『大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた』(太田出版)など

《取材・文/蒔田稔》