動物園の公式グッズは、基本的に園内でしか売られないので、一般の市場と異なる。ぬいぐるみなら、初回の製造数は数百個の場合が多い。人気の高いパンダのぬいぐるみなら、初回3000個というケースもあるが、それでも人気アニメのキャラクターなどのグッズと比べれば桁が違う。それがコストに反映される。多く作れば当然安くなるが、売る場所が限られるので、結果的にたくさん作れない。

 だからと言って「ネット印刷やインクジェットプリントなどで作れるようなクオリティではいけません。クオリティを保ちながら、ぎりぎりの価格で作る。なかなか難しいです」と進藤さんは話す。

 また、東京動物園協会は公益財団法人なので、株式会社のように稼いだお金をプールして、次年度に持ち越すことができない。営業活動で得た収益の一部は「公益目的事業」に振り替えている。

 その額は、直近で決算が出ている2019年度が6600万円。多い年度は約1億円に上った。このお金は、園内の環境整備などによって、来園者に還元するようにしている。例えば、園内の休憩所のテーブルとイスを新しくしたり、ギフトショップの屋外売り場に雨や日差しを遮るテントを設置したりした。

シャンシャン滞在延長でグッズはどうなる?

 シャンシャンが中国へ行く期限は、2020年12月末(2019年5月31日発表)、2021年5月末(2020年12月11日発表)、2021年12月末(2021年3月26日発表)と延長を重ねている。

 これまで、最後に発売されたシャンシャングッズは、2020年11月18日発売で、タレントの中川翔子さんの歌が入った「メモリアルソングCD『ありがとうシャンシャン』MV付」(1650円)だった。だが、休園中の2021年4月3日、「珪藻土コースター パンダ」(528円)が通販サイトに掲載された。実に4カ月半ぶりの新商品だ。これは正確にはシャンシャングッズではないが、目の周りの模様はシャンシャンにそっくり。シャンシャンの日本滞在が延びたので、新商品は今後も発売されるかもしれない。

 シャンシャンがいなくなった後、既存のシャンシャングッズはどうなるのだろう。「全部がいきなりなくなることはないと思います。細かい商品は徐々になくなっていくと想像しますが、ぬいぐるみなどは、いくつか残るのではないでしょうか。私たちも、シャンシャンが上野動物園にいたことをお客様に忘れてほしくないので、残したいなと思っています」(進藤さん)。

 シャンシャンが中国へ旅立っても、上野動物園でシャンシャンを見て、グッズを買った思い出は、グッズとともにずっと残るだろう。


中川 美帆(なかがわ みほ)Miho Nakagawa パンダジャーナリスト
福岡県生まれ、早稲田大学教育学部卒。毎日新聞出版「週刊エコノミスト」などの記者を経て、ジャイアントパンダに関わる各分野の専門家に取材している。訪れたパンダの飼育地は、日本(3カ所)、中国本土(11カ所)、香港、マカオ、台湾、韓国、インドネシア、シンガポール、マレーシア、タイ、カナダ(2カ所)、アメリカ(4カ所)、メキシコ、ベルギー、スペイン、オーストリア、ドイツ、フランス、オランダ、イギリス、フィンランド、デンマーク、ロシア。近著『パンダワールド We love PANDA』(大和書房)