「わきまえない女」がパワハラの標的に

 いつ、誰が雇い止めにあってもおかしくない状況は、職場環境にも影を落とす。今度は誰が切られる? あの人? いや、自分かも……。疑心暗鬼になり、「非正規同士で誰かをターゲットにして、退職に追い込むところを何度も見ました」と本間さんはため息をつく。

「露骨な無視や陰口はしょっちゅう。外見や体形を悪く言われることもあります。書類のファイル方法が違っていたとか、ちょっとしたミスがあるたび正規職員に伝えられ、同僚みんながいる前で注意される。まるで公開処刑です」

 学歴について揶揄されたこともある。

「私は家の事情で大学進学できなかったのですが、それを知っているくせに、同僚から“第2外国語、何だった?”と、ニヤニヤしながら聞かれたりしました」

 いじめやパワハラがひどくなったのは、雇い止めなど非正規を取り巻く問題について、「これはひどいんじゃないですか?」と意見を言うようになってから。その後、ターゲットにされた本間さんは、職場全体に家族のことなど個人的な噂を流されてしまった。

「LINEなどでつながっていた職場の友人たちからも連絡を絶たれました」

 公募を経て再契約された4月以降、嫌がらせはエスカレートしている。ある日、本間さんが出勤すると、自分の席が周りから離され部屋の隅に移されていた。おまけに机の周囲は、高い仕切りで囲われていたのだ。

「なによりつらいのが、仕事を与えないという嫌がらせ。4月になり突然、私が担当していた相談支援の業務からはずされました」

 どういうことか上司にたずねると、3月31日までいた以前の上司が決めたことで、知らないと言われた。そこで以前の上司に問い合わせたら、4月1日からの現・上司がやったことなので「自分は知らない」とつっぱねられた。

「それでも問い詰めたら、今の上司が“一昨年のデータを見て、ほかの人と公平になるようにした”と打ち明けました。でも、一昨年はコロナが騒がれる前で、今年に比べ相談件数も担当していた数も少ないので、参考にならないはずなんです。こんな仕打ちをされたのは初めてです」

 相談員の仕事に誇りを持って取り組んできた本間さん。応援してきた求職者の仕事が決まったときは、大きな喜びとやりがいを感じる。だが最近は、限界が見えてきた。

パワハラが原因で、眠れなくなったり、消えてしまいたくなります。でも、相談員を辞めたら子どもの学費を捻出できません。仕事で関わった企業で、うちの職場で働かないかと声をかけてくれた人もいますが、今より収入が低くなってしまうので」