映画『るろうに剣心』完成披露レッドカーペットイベント('12年)
【写真あり】飲み会に現れた佐藤健のプライベートショット

演じるを超えて「宿す」へ

 佐藤健が演じる実写版・剣心について語る上で、もう一つの最重要の要素、それは、彼の渾身の演技であると思う。

 剣心というキャラクターを成り立たせる上では、幕末の京都で暗躍した「人斬り抜刀斎」と、平和な時代の到来を望む「緋村剣心」という二面性を表現することが鍵となる。

 もちろんそれは、全く異なるキャラクターを、ただシーン毎に演じ分ければよいという単純な話ではない。

 幕末における数々の罪を贖い続ける日々の先に、ついには「人斬り抜刀斎」としての過去を乗り越え、新しい時代において果たすべき使命を見出していく。『るろうに剣心』の物語の本質は「贖罪」と「再生」であり、そして佐藤健は、その二つの側面を、繊細なグラデーションにのせて見事に表現してみせた。

 かつて多くの命を殺めてきた男が、変わりゆく時代の流れの中で「不殺の誓い」を立て、逆刃刀を手に平和のために戦い続ける。その壮絶な悲哀と覚悟を伝えるために、佐藤健は、計り知れないほどの深度をもってして剣心と一体化する。

 もはや「演じる」を超え、「宿す」と表現したほうが正しいのかもしれないが、そうした全身全霊の姿勢は、明確な答えのない演技の世界で、それでも観客が求める一つの正しい答えを追求し続ける俳優としての業の表れだろう。そして、そうした佐藤健の俳優としての懸命な生き様が、スクリーンに明確に刻まれているからこそ、僕たち観客は強く心を動かされるのだと思う。

 ドラマパートだけではなく、アクションシークエンスにおいても同様で、一つひとつの動作で感情を表し、殺陣の展開を通して物語を語る佐藤健の姿は、彼の俳優としての表現力の高さを証明している。アクションとは、単なる殺陣ではなく、戦う者同士の感情と感情のぶつかり合いであり、だからこそ、『るろうに剣心』シリーズのアクションは、鮮烈なドラマとしても見応えがあるものに仕上がっているのだ。

 佐藤健の演技、および、彼がスタッフたちと共に作り上げたアクションを軸に過去作を振り返ってきたが、もちろん、このシリーズを彩ってきた俳優は決して彼一人だけではない。

『るろうに剣心京都大火編』初日舞台挨拶('14年8月)

 江口洋介、綾野剛、吉川晃司、福山雅治、伊勢谷友介、神木隆之介、そして藤原竜也をはじめ、数々の俳優が佐藤健と刀を交え、このシリーズに魂を込めてきた。そして『最終章』において、最凶の敵・縁を演じるのは、次世代のトップを走る若手俳優・新田真剣佑。

 10年にわたってシリーズを牽引し続けてきた佐藤健との演技合戦が、いったいどのようなケミストリーを生み出すのか。ぜひ、スクリーンで目撃してほしい。

<プロフィール>
松本 侃士(まつもと・つよし)
音楽ライター/映画ライター/Voicyパーソナリティ「ポップ・カルチャーの未来から」/1991・10・1 生/慶應義塾大学卒/2014年、音楽メディア企業ロッキング・オンに新卒入社、編集・ライティング等を経験/2018年、渋谷のITベンチャー企業へ転職/本業と並行してライター活動中。
【Twitter】@tsuyopongram_ 【note】https://note.com/tsuyopongram_
【Voicy】https://voicy.jp/channel/1550