私:同じ意見ですね。外見を整えてメンタルも向上するってすごく効率的ですしね。骨格的には、前髪がないほうが似合うんですか?

美:そう思いますね。鼻の高さもそうですけれど、決め手は顎(あご)のラインですかね。顎がシャープだと大人っぽい印象になるので、逆に前髪が合わないんですよ。あ、それとおでこにヒアルロン酸を入れて、ちょっと“丘”を作ってる方も多いそうなので、そこも強調してるんじゃないかな、と。

私:は〜、確かに。やっぱり日々、何人も髪を切っていると、職業病というか……骨格を考えるものですか?

美:そうですね〜。電車とかで人の髪型と顔のラインは見てしまいますね。「この人、顔をもっと出したほうがいいのにな」とか。でも、アーティストじゃなくてサービス業なので、もちろんお客さんには言わないですけどね(笑)。

私:さ、さすがプロですね。ちなみに僕の髪型どう思いますか? 似合ってますかね。

美:(苦笑)

私:え。

美:(苦笑)

これから、アイドルの前髪は減る?

 なぜ日本のアイドルには前髪があるのか。その理由には、いろいろな考えがあるとは思う。一応、ここでの答えとしては「ソフト」と「ハード」の両方があることにしておこう。

 ソフト面としては「日本男子は長年にわたって、呪いのように前髪を求めている」ということだ。ハード面でいうと「日本人に多い平らで丸い顔に前髪が似合うから」という背景もあるだろう。

 ただし、先述したとおり「今後は日本の女性アイドルから前髪がなくなっていくのでは」という予感がする。その理由は「男性のファンだけでなく、女性ファンが増えているから」。また「『女性は守られるべき存在である』という考えは、若い世代にはなくなってきているから」という2点がある。

 そのうえ、歌って踊りつつ、イラストやプロデュースなど自分の得意を生かして活動するアイドルも増えた。もともと「偶像」を意味するアイドルだが、もはや自立し始めているのかもしれない。

 前髪はある意味、内面性を表す“装備”の1つでもあると思う。だんだんと自立し始めたアイドルたちの前髪というアイテムはどう変化するのか……。着目してみるのも面白いかもしれない。

(文/ジュウ・ショ)


【PROFILE】
ジュウ・ショ ◎アート・カルチャーライター。大学を卒業後、編集プロダクションに就職。フリーランスとしてサブカル系、アート系Webメディアなどの立ち上げ・運営を経験。コンセプトは「カルチャーを知ると、昨日より作品がおもしろくなる」。美術・文学・アニメ・マンガ・音楽など、堅苦しく書かれがちな話を、深くたのしく伝えていく。note→https://note.com/jusho