「この商売にかけよう」と決意

『バッカス』は開店初日から終日満席のフル回転。1日の来店数は300名に上った。1杯のドリンクを楽しむために、お客さまがわざわざ自分の店までやってきてくれる。そのうれしさ、その活気。

 スーツ姿で店頭に立ち、お客さまに「いらっしゃいませ!」と声をかけ続けていた宗次さんが、不動産業とは180度異なる、コーヒー1杯150円の客商売の魅力に気がついたのは、このオープン当日であったという。

(開店祝いの)お花だけ持って帰る人もいましたけど、それでもうれしかったし、楽しかった。それと同時に不動産屋はどうでもよくなって、廃業しよう、この商売にかけようと、そう思ったんです

不動産仲介会社の経営から喫茶店のマスターへ転身
【写真】ココイチ創業の原点である喫茶店『バッカス』店内の様子

 翌日には、ポロシャツ姿でカウンターに立っていた。

 お客さまを「いらっしゃいませ! 」と笑顔で迎え、サンドイッチの注文には辛子の有無までひとりひとり確認。最後のひと口まで具材がのっている、その気配り。 

 さらには専用カップを用意、マイカップでコーヒーを出すサービスも開始。傍らには、笑顔できびきびと働く、直美さんの姿。

 そんな店が評判にならないわけがない。若夫婦がいきいきと切り盛りするバッカスの売り上げは徐々に右肩上がりに。

帰り道くたくたになって踏切の遮断機前で夫婦2人して一瞬眠ってしまったり。お風呂は外釜で沸かすスタイルだったんですがお湯が沸騰する音で目を覚ましたり(笑)

 睡眠不足になるほどの激務ではあったが、1年後、宗次さんはさらなる展開に踏み出す。コーヒー専門店『浮野亭』の開店である。

 開店資金1100万円の調達は、“私に任せて”の声とともに、妻・直美さんの担当に。以来、CoCo壱番屋の時代に至るまで、アイデアは宗次さん、資金調達は“金融機関からNOと言われたことがない”直美さんという、ツートップ体制になっていく。

ところがねえ、この店がそれはヒマでねえ……(笑)。1年近くは資金繰りがものすごく大変でした

 CoCo壱番屋創業のヒントを得たのも、実はこの浮野亭だったと宗次さん。

世の中には家から出られない人もいる。そういう人に喜んでいただこうと出前サービスを始めましたが、ライスメニューがなかった。それでカレーとチャーハンを用意したんです

 直美さんが作る、そのカレーが大評判に。気をよくした宗次さんが直美さんに3号店はカレーの専門店にしたいと告げると、間髪をいれず“いいじゃない! ”との返事。

でも、カレーだけじゃ飽きられる。まだ見たことも食べたこともなかったけれど、吉野屋という店の牛丼が話題になっていた。だったらカレーと牛丼C&Gでいこうと。それで東京にリサーチに行ったんです

キッチンカーで出前サービスを始めたころ