同性婚のカギを握るのは40代~50代女性

 札幌地裁判決は、異性カップルと同等な婚姻制度がもたらす法的効力が同性カップルにはなく、違憲とする内容だ。同時に、そうした制度を作ってこなかった国に対する責任はないという内容だった。田中さんはこう指摘する。

「判決では、国が法律を作っていない責任はないとしましたが、僕はあると思います。自治体でパートナーシップ制度ができたころから国が取り組んでいれば、同性婚も実現していたかもしれません」

 同性婚が実現したとしても、田中さんはお互いの仕事のために、川田さんとは別姓にしたいと考えている。

四国で初めて行われたプライドパレードにも手をつないで参加した。※写真提供:田中さん
【写真】7歳差カップルでもある田中さんと川田さん夫夫(ふうふ)と愛犬の“つぶ”

「選択的夫婦別姓を含め、婚姻制度をアップデートする時期がきているのでは?」

 札幌地裁での判決以前にも同性パートナーをめぐる訴訟があった。20年生活してきた同性パートナーが殺害され、遺された男性が犯罪被害者給付金の対象かどうかが争われたものだ。名古屋地裁は'20年6月、同性パートナーとの共同生活を婚姻同様に見なす「社会通念が形成されていない」として、対象外とする判決を出した。

「このときの判断からすれば前進しました。札幌地裁の判決は、同性婚を正面から扱った初めてのもの。今後の裁判に影響を与えると思います」

 と前出・渡邉教授は指摘。ただ、札幌地裁の判決は、同性カップルには子どもが生まれないことを前提にしているよう推察できる。

「レズビアンカップルが精子提供によって出産する例や、ゲイカップルが代理懐胎を用いることもあります。同性カップルの家族についても子どもの存在を考えて、婚姻の規定を見直していくべきです」

 最近は世論調査で、同性婚を認める意見が多くなってきている。

「同性婚の法制化」に対する意識の変化

「高齢者層よりも若年層が、男性よりも女性が同性婚を許容しています。その意味では、40、50代の女性がカギを握ると思います」

 同性カップルをはじめ家族の形は多様化している。実態に合わせた法制度が必要だ。


取材・文/渋井哲也 フリーライター。栃木県出身。自殺やいじめ、虐待など、生きづらさをめぐる問題を中心に執筆。『学校が子どもを殺すとき』(論創社)ほか著書多数