バブル後は「大人がいない世界」

 反町隆史演じる鬼塚英吉が主人公の『GTO』(フジテレビ系)が放送されたのは'98年。『教師びんびん』のころとは大きく時代背景が変わっていた。

「大人たちの世界だったバブルが崩壊し、その後にコギャルブームが生まれた。大人の権威が失墜した時代に制作された学園ドラマなんです。鬼塚は不良だった男が教師になり『俺はお前たちの気持ちがわかるよ』と生徒に寄り添う、古きよき型破り教師の系譜ともいえるキャラクターです

 ただ、鬼塚は子どもたちの目線に下り、友人のように生徒に寄り添うだけではない。子どもたちの目線のまま大人たちに本音と正論をぶつける姿は新しかった。

「学校側には『こんなのが教育だっつうんなら、教師なんてこっちから願い下げだ』と、生徒には『俺が学校辞めたって、お前ら一生友達だ』とちゃんと言うことができる。そんな先生だから子どもたちから信用されたし、学校という権威を屁とも思わない教師像が共感を集めたのです」

 共感とは正反対の“逆張り”を貫いたのは、ダメ人間で褒められるところ皆無の教師像が新鮮だった『伝説の教師』(日本テレビ系・'00年)。松本人志演じる・南波次郎は決して正論を言わない先生だった。

「末期がんで余命半年の女子生徒に、南波は『俺がお前を笑わせたる。眉間に皺寄せて死んでいくか、笑いながら死ぬか、お前が決めたらええ』と堂々と言ってしまいます。

 別に何ができるという話ではないのですが、熱血だったり元不良だったり体育会系だったりという教師像に対し『お笑いで強い者が偉いんだ』という考えのもと、価値観の転倒を狙った松本人志の活動のひとつともいえるドラマでした」