バブル期にあえて“熱血モノ”

『ゆうひが丘〜』のような、それまでの朗らかな学園ドラマとは一線を画し、リアルな中学校の教育現場を描いたのが『3年B組金八先生』(TBS系・'79年〜)だ。

「妊娠、校内暴力、いじめ、育児放棄、薬物使用など、作中で取り上げられた問題の種類とディープさは他のドラマの追随を許しません。そんな生徒の悩みを全身で受け止め、最後は大声で正論を繰り出す坂本金八という教師像は世間から圧倒的な支持を得た。

 あと、ある時期からこの作品は“リアルな学園もの”から“社会批評ドラマ”へ形を変えています。金八が問題をどう解決していくかが初期の見どころだったけど、後半は八乙女光演じる生徒のドラッグ問題や上戸彩演じる生徒の性同一性障害など、さまざまな事件ありきになっていった感があります」

『ゆうひが丘~』や『金八先生』が新たな教師像を提示した後にスタートした『スクール☆ウォーズ 〜泣き虫先生の7年戦争〜』(TBS系・'84年)が描いたのは、時代錯誤ともいえるスポ根だった。

「このドラマが制作された'84年は、そろそろバブルが訪れようかというタイミングです。時代背景からすると超絶古臭い内容でしたが、それが意外にもウケてしまった。チャラチャラした当時の世相に関心が持てなかった人たちに、時代錯誤な内容と大映ドラマ独特の大仰な演出、武骨な登場人物がストレートに響いたんです。

 山下真司演じる滝沢賢治は型破りで熱く真っ当なきれい事を言う、古くからの学園ドラマの類型的な教師像でした。そんな時代錯誤な先生が現代的な問題である校内暴力にどう立ち向かうか? というつくりになっていたのが面白いですね」

『スクール☆ウォーズ』から4年後、まさにバブル絶頂期に制作されたのが『教師びんびん物語』(フジテレビ系・'88年)である。

「このドラマの前身『ラジオびんびん物語』(フジテレビ系)はコメディー要素の強いチャラついた内容でした。そんな流れの中、あえて子どもたちと熱血教師の触れ合いを描いたのが今作です。『熱中時代』で水谷が演じた北野と今作で田原俊彦が演じた徳川龍之介は、教師のタイプとしてはそんなに変わらない。つまり、揺れ戻しが起こっているのですが、トシちゃんの語る青臭い正論がこの時代には新鮮に響きました」

 当時あふれていた軽いノリのトレンディードラマとは明らかに一線を画す作品だった。