復活に一役買う『全力!脱力タイムズ』

 また『脱力』では一昨年、歴史的な復活劇も生まれた。アンタッチャブルの山崎弘也と柴田英嗣が10年ぶりに漫才をしたのだ。柴田が女性トラブルに見舞われて以来、別々に活動してきたが、山崎がコンビ復活を有田に相談。有田が「脱力」での復活を勧めたという。

 その理由は「うちの番組だったら伏線がある」というもの。じつはこれまでにも、柴田がゲストだったときに「アンタッチャブル復活」と思わせておいて、バービーやハリウッドザコシショウ、コウメ太夫が相方として出てくるというドッキリが行われてきた。

 また、狩野英孝のゲスト回では、まさかの加藤紗里登場かと見せかけて、柴田が登場したこともある。柴田の元妻がファンキー加藤と不倫していたことに引っ掛けた「加藤さん」つながりのドッキリだ。

 自分もドッキリに借り出されたことのある柴田は、フェイクだらけのこの番組でコンビ復活が実現するとは夢にも思わない。実際、この日もまずは小手伸也が登場。いつものパターンを装いつつ、本物が出てきたから、柴田はのけぞり、倒れこむほどの驚きを見せた。その「やらせ」ではない緊張感がふたりのテンションを高め、視聴者はそこにひきこまれたのである。ふたりの漫才は、キレも呼吸も、10年前と変わらない見事なものだった。

 ちなみに、番組では情報が漏れないよう、有田と山崎、小手以外の出演者やスタッフには極秘にされていたという。そんな用意周到さも、サプライズの成功につながった。こうして、スキャンダルはふたりの友情物語として完結し、感動的なエンタメとして受け入れられたわけだ。禍を転じて福と為す、とはまさにこのことだろう。

 みそぎや救済といっても、そのかたちはさまざま。そこから、笑いや感動が生まれることもある。そんなところに注目して、テレビを見るのも一興だ。

PROFILE●宝泉 薫(ほうせん・かおる)●作家・芸能評論家。テレビ、映画、ダイエットなどをテーマに執筆。近著に『平成の死』(ベストセラーズ)、『平成「一発屋」見聞録』(言視舎)、『あのアイドルがなぜヌードに』(文藝春秋)などがある。