ガニ股=男らしい

電車で寝てしまい、気づいたら足を広げていた。悪気はない」(62歳・男性・公務員)

 こうなると、人との距離感がバグっているとしか思えないが、当事者のオジサンたちはどう思っているのか?

「若いころからのクセで、無意識のうちにやってしまう」(58歳・男性・会社員)

「もともと身体が大きいので、電車の1人分のスペースが狭い」(48歳・男性・会社員)

「スマホを見てしまうのは、何がハヤリなのか興味があるから」(39歳・男性・会社員)

 体格の違いについてはしかたがないかもしれないが、ガニ股=ワイルドというような古臭い男らしさにとらわれているような意見もちらほら。このように他人との距離に無頓着なオジサンが大量発生してしまうのはなぜなのだろうか。

「基本的に人間は、他人が入ってくると不快さや不安を感じるパーソナルスペースというものを持っています。一般的には男性のほうがパーソナルスペースは狭く楕円形で、女性は広く円形といわれます。そのため男性は人との距離が近くてもそれほど不快さを感じないのかもしれません」と教えてくれたのは、公認心理師の塚越友子さん。

「一方で、女性はそうはいかないので、できるだけパーソナルスペースを確保したい。ただし、こればかりは個人の感じ方次第という側面も大きいので、私は嫌だ、俺は別に嫌じゃない、というぶつかり合いで平行線になってしまうのが難しいところです」

 オジサンたちが足を開けば開くほど、女性との心の距離も広がっていくのが実情だ。


お話を伺ったのは……
塚越友子さん●公認心理師、臨床心理士、産業カウンセラー。2008年に東京中央カウンセリングを開業し、個人カウンセリングを行うほか、自殺予防や家族心理学、産業心理学、コミュニケーション論などの知見を生かし、メディア等でも多数活躍。

(取材・文/吉信 武)