ただ名古屋大学大学院の准教授で象徴天皇制に詳しい河西秀哉さんは「憲法上、天皇が政治的問題へ関与することは許されない」と話す。

ご発言は陛下ご自身のリスクにも

今回のご発言はそうとうなリスクを伴っています。私はぎりぎりで許容されるラインだと考えますが、“憲法違反だ”と捉える方々もいると思います。

 発言を受けて政府が直接的に五輪におけるコロナ対策に着手すれば“天皇が政治に関与された”と問題になるため、あくまで間接的に対応するはずです。例えば、感染症対策について、より具体的な策を示したり、両陛下がなぜ五輪に携わる必要があるのかを丁寧に説明するのではないでしょうか」

 リスクを伴いながらも陛下が今回の行動に踏み切られた理由は2つあるという。

'20年4月、両陛下は『新型コロナウイルス感染症対策分科会』の尾身茂会長から約1時間半のご進講を受けられた
【貴重写真】'64年東京・'98年長野のオリンピックを観戦される天皇陛下

「1つめは、政府に対して抱かれている“感染症対策の懸念”を示すためです。天皇は、東京五輪の名誉総裁として万全な対策を求められています。

 2つめは、国民からの批判を防ぐためです。開会式では、国の元首が開会宣言を読み上げることになっています。その場合、開催に反対してきた国民から反発の声が上がるでしょう。天皇が深く心配しておられることを国内外に印象づけたことで“天皇のお立場上、表に出るのは仕方がない”という理解につながると思います」(河西准教授)

 陛下による“メッセージ”は、実は今回が初めてではない。ご進講や、各公務の場でもコロナについてのおことばを述べられてきた。

「初めての緊急事態宣言が発令された昨年4月、両陛下は政府の『新型コロナウイルス感染症対策分科会』の尾身茂会長からご進講を受けられました。普段はご進講でのご発言が宮内庁のHPに掲載されることはないのですが、尾身会長に語られた“感染症の拡大は、人類にとって大きな試練”といった一連のおことばが掲載されたのです。それほど、コロナに対する陛下の危機感が高いということ。

 その後のご進講や、コロナと直接関係のない場面でも、公におことばを述べられる際には、コロナと闘う医療従事者への労いや感謝の意を必ず述べられてきました」(前出・宮内庁関係者)