「顔面最強大河」「イケメン大渋滞」。これらは現在放送中の朝ドラおかえりモネ』と大河ドラマ青天を衝け』に関する記事で用いられたフレーズだ。

 実際、ここまで発表・出演している顔ぶれを年齢順で挙げていくと、『おかえりモネ』には、高田彪我(19歳)、永瀬廉(22歳)、清水尋也(22歳)、坂口健太郎(29歳)、玉置玲央(36歳)、浅野忠信(47歳)、西島秀俊(50歳)、内野聖陽(52歳)。

 『青天を衝け』には、主演の吉沢亮(27歳)を筆頭に、板垣李光人(19歳)、岡田健史(22歳)、志尊淳(26歳)、犬飼貴丈(27歳)、磯村勇斗(28歳)、町田啓太(31歳)、満島真之介(32歳)、高良健吾(33歳)、小池徹平(35歳)、山崎育三郎(35歳)、福士誠治(38歳)、大谷亮平(40歳)、要潤(40歳)、ディーン・フジオカ(40歳)、玉木宏(41歳)、草なぎ剛(46歳)、田辺誠一(52歳)、堤真一(56歳)。

 10代から50代までの各年代から、ハンサム、王子様、ワイルド、ダンディなど、さまざまなタイプのイケメンがそろっている。朝ドラは月~土曜、大河ドラマは日曜に放送されているため、「“週7日イケメンシフト”を敷いている」と言ってもいいのではないか。

 ただ、朝ドラ大河ドラマも、制作局は公共放送のNHKであり、なぜこれほどイケメンを大量起用しているのか、疑問の声が挙がっているのも確かだ。いつからNHKドラマのイケメン化が進みはじめ、現在のような過去最大級のレベルに至ったのか。

きっかけは『八重の桜』の西島秀俊

 キャスティングは、「物語や役柄にフィットするか」だけでなく、視聴者層や好感度などを踏まえて戦略的に行われるもの。ここまでイケメンを重層的にそろえていることから、マーケティングに基づいたものであることは明らかだ。

 もともと2007年の『花ざかりの君たちへ~イケメン♂パラダイス~』(フジテレビ系)のように、若手のイケメン俳優をそろえた作品は学園ドラマの定番だった。しかし、2010年代に入ると10代、20代だけでなく、30代、40代、50代の俳優も「イケメン」として扱い、組み合わせてキャスティングするのが当然のようになっていく。

 そのきっかけになったと業界内で言われているのは、2013年の大河ドラマ『八重の桜』。主人公の兄役で出演した西島秀俊が鍛え上げられた上半身を見せる勇ましいシーンが女性視聴者の間で大きな話題となり、さらに1か月後にも西島と長谷川博己の入浴シーンがあり、反響だけでなく視聴率も上がった。

 その流れを受けて民放でも、『家族ゲーム』(フジテレビ系)で櫻井翔がサウナに入るシーンがお約束となるなど、“イケメン+裸”の演出が一時多用されたが、次第に落ち着き、イケメン大量投入の流れに変わっていく。

 ここに来てイケメン大量投入の流れが急加速しているのは、昨春に行われた視聴率調査のリニューアルが大きい。年齢層や性別ごとの個人視聴率が可視化されたことによって、NHKは主要視聴者層の高年層だけでなく、若年層からの支持も得なければいけなくなった。