毎朝報じられる朝ドラと大河の視聴率

 さらに近年は、受信料契約に関するNHKへの風当たりが強くなり、それは制作費が高いと見られている朝ドラと大河ドラマにも及んでいる。そもそも公共放送のNHKは基本的に視聴率を無視していい立場だが、朝ドラと大河ドラマだけは例外。月曜から金曜までの毎朝ネットメディアに視聴率を報じられ、「下がった」と叩かれやすい上に、視聴率が悪ければ「受信料を返せ」という声が挙がってしまうからだ。

 NHKがこれらの視聴率対策として、イケメンを大量投入しているのは間違いないだろう。民放だけでなくNHKも、「各世代の個人視聴率を確保するために、イケメンたちで各世代の女性層をつかむ」という手堅い方法を採用しているのだ。

 わかりやすいのは、今春にNHKが放送した朝ドラと大河ドラマ以外の作品。『きれいのくに』は吉田羊、蓮佛美沙子、加藤ローサら美人女優をそろえる一方、イケメンは稲垣吾郎のみ。『半径5メートル』も芳根京子、永作博美を全面に押し出しつつ、イケメンは毎熊克哉のみ。『今ここにある危機とぼくの好感度について』は主演の松坂桃李以外、高年層の俳優ばかり。『ひきこもり先生』も佐藤二朗主演のドラマでイケメンは少ない。

 視聴率が報じられる朝ドラと大河ドラマ以外イケメンは極めて少なく、演技力と役柄との相性重視でキャスティングしているのだ。もちろん朝ドラと大河ドラマも「イケメンだから」という理由だけでキャスティングされることは考えづらく、演技力あってのものだが、「純粋なクオリティーファーストではない」ということだろう。

ヒロインへの共感が集まりづらい

『なつぞら』にも出演、現在は大河ドラマ『青天を衝け』で主演を務める吉沢亮
【写真】打ち上げに参加するイケメンたち、私服でもオーラ隠せず

 ただ、「物語に集中しづらい」などの理由から、イケメンの大量投入を快く思っていない視聴者がいるのも確かだ。

 たとえば『おかえりモネ』は、ヒロインの百音(清原果耶)の故郷の気仙沼、就職先の登米、気象予報士として修行を積む東京と、すべての場所でイケメンとふれ合って暮らすことになる。リアリティに欠けるほか、男性視聴者の中には「またイケメンかよ」とボヤきたくなる人は少なくないだろう。

 また、百音が山で遭難したとき、気象予報士役の西島秀俊、医師役の坂口健太郎、父役の内野聖陽の助けで救助されるシーンがあった。このようなシーンが続くことで視聴者に「あまりに恵まれていないか」と思われ、ヒロインへの共感度が上がらないリスクがある。実際、『なつぞら』('19年)のヒロイン・奥原なつ(広瀬すず)は、イケメンに囲まれ、助けられる展開が続いたことで、なかなか視聴者からの共感を集められなかった。

 出演するイケメン俳優たちから見ても、大量起用によって役のリアリティを感じてもらいづらくなるほか、当コラムのように「イケメン」でひとくくりにされやすく、目立つことが難しくなる。

 やはり朝ドラと大河ドラマのイケメン大量起用には、メリットだけではなく問題点もあるだけに、制作サイドには総合的な判断力が問われている。

木村隆志(コラムニスト、テレビ解説者)
ウェブを中心に月30本前後のコラムを提供し、年間約1億PVを記録するほか、『週刊フジテレビ批評』などの番組にも出演。各番組に情報提供を行うほか、取材歴2000人超の著名人専門インタビュアーでもある。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』など。