企業が「ストローを紙製にしました」といった取り組みをすれば、エコな企業だとアピールでき、さらなる消費を増やすことができる。そういったグリーンウォッシュ(環境にやさしいというごまかしの企業アピール)を安易に受け入れる前に、本当に環境にいいのかという視点を消費者として持つことも重要だ。

「最近では環境配慮型製品というものも増えています。省エネ家電のように、使用する段階でエコにつながるというものもあれば、製造から流通、廃棄に至るまでのトータルコストで環境保全に貢献するような製品もあります。こういったものを積極的に選択することはいいのですが、ここでもやはり注意が必要です」

 筆者はちょうどいま冷蔵庫の買い替えを検討中。家電の購入自体がエコにつながるのであれば、なるべく早く、いますぐにでも買い替えたほうがいいと思っていたが……。

「当然ですが“まだ使える家電があるけど省エネにつながるのなら環境配慮型製品に早めに買い替えよう”と新製品を購入するのはあまり意味がありません。製造流通の過程でかかる環境負荷は、どんな製品でもゼロにはなりえません。新しく購入するよりまず、いまあるものを大事に使っていく選択肢も忘れずに検討すべきです

 たしかにわが家の冷蔵庫はまだまだ使える現役選手。消費電力が極端に高くて困っているというわけでもなく、エコを言い訳にしてただ買い替えたかっただけかもしれないと反省した。では、この夏フル稼働予定のエアコンのほうはどうだろうか。

「よく“エアコンは28度に設定しましょう”という省エネ活動の話を聞きますが、これもどこまで環境負荷が減るのかは疑問です。個々の家庭の省エネというのは、意識としてはとても重要ですが、環境全体を考えると微々たる効果しかありません。例えばエアコンを使わずに熱中症になってしまうなど、何かの代償があっては本末転倒です

山を切り開いてまで太陽光発電の疑問

 安藤さんによると、何かの利益を得る一方で何かを毀損してしまうという事例は、サステナビリティ(持続可能性)の問題でよくある話だそう。

「太陽光発電や電気自動車など、クリーンなイメージがあるものについても同様です。先日の熱海の土砂災害は記憶に新しいですが、山を切り開いてまで太陽光を使わないといけないのかという議論も活発化していますよね。ほかにも、日本で回収した服をアジアやアフリカの発展途上国に寄付しようというリサイクル活動もありましたが、その輸送の際のコストや環境負荷を考えると効果がどこまであるのかわかりません」

 たしかに、太陽光パネルの製造にも設置にも過大な環境負荷がかかる。電気自動車も発電自体にかかる負荷を考えれば、どこまでエコといえるのだろうか。

 さらには当たり前のように続けているゴミの分別にさえ不要論がある。

「プラスチックゴミは原料として再利用するよりも、分別せずに可燃ゴミとして燃やしてエネルギーを回収したほうが効率がいいという、サーマル・リサイクルという考え方もあります。

 冒頭でも述べたように、どんなエコ活動でも絶対的に正しいというものは存在せず、どれも一長一短という側面があるので、環境問題は本当に難しいですよね」

 とはいえ、環境について考え続け、ひとつひとつのアクションを積み重ねることは絶対にやめてはいけない。

「環境問題はみんなが被害者であり加害者。間違ったエコにならないためには、思い込みをせず、まずはいろんな情報を集めることが大事です」

お話を伺ったのは……サステナビリティ・コンサルタント 安藤光展さん
一般社団法人CSRコミュニケーション協会・代表理事。専門は、CSR、SDGs、サステナビリティ情報開示。著書に『創発型責任経営』(日本経済新聞出版)ほか多数。

(取材・文/吉信 武)