THE TOBACCO(ザ・タバコ)

 最後に紹介するのは、2020年6月1日にオープンした新しい喫煙空間『THE TOBACCO』神田店。『THE TOBACCO』は改正健康増進法より飲食店含め屋内での喫煙が原則禁止される中、よりマナー良く、心地よい分煙の実現と煙草文化の発信を目的として始動した新しい喫煙所ブランドだ。

 現在は神田、赤坂、東京、秋葉原の4店舗が展開されており、今後も全国各地に順次オープンする予定。

『THE TOBACCO』を運営する株式会社コソドの代表取締役 CEO・山下悟郎氏にお話を伺ったところ、「社会的な課題に対して貢献できるような事業をやってみたい。その中でも、世の中的にあまり好まれていない領域であるたばこに関する事業を起こせば面白いのではないか」という思いから喫煙所運営事業をはじめたという。

 神田店の空間デザインは、IDEE(東京)、Jean Nouvel Design(パリ)、 Yabu Pushelberg(ニューヨーク)を経て、現在は東京を拠点に「Shuhei YONEDA / L'ATELIER」として活動する米田周平氏が担当。グレーがかった白を基調としたモダンなデザインはスタイリッシュでありながら、椅子やスタンド、証明カバーはどれも円柱型になっており、どこか女性も立ち寄りやすい可愛らしい印象も。設置されているインテリアはすべてたばこの形をイメージしているそうだ。

室内は白を基調としたおしゃれな空間
室内は白を基調としたおしゃれな空間

 見た目だけではなく、国が基準としている排煙効率を大幅に超えた空気清浄スペックを搭載。40〜50秒の間に全空気が入れ替わる仕組みになっており、常に空気清浄機も作動している。『THE TOBACCO』は有人の喫煙所であるため、利用者が多い時には排煙効率をアップさせたり、逆に少ない時は下げたりと快適さを担保させるためのオペレーションが組まれているのも特徴だ。

 おしゃれな空間づくりと徹底した煙と匂いのコントロールにこだわっているのは、喫煙者が訪れたくなるような場所を提供するためだという。

空間が汚かったり、薄暗くて寂れた雰囲気のある場所には誰も行きたくないですよね。結局、その場所に行くぐらいなら路上で吸えばいいかと思ってしまう人もいる。衛生的で見た目も良い高級ホテルのような、わざわざ立ち寄りたくなるような心地の良い空間を作りたいと思いました

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 今年2月、リサーチ会社のネットエイジア株式会社が実施した『喫煙・喫煙スペースに関する意識・実態調査』の結果によると、非喫煙者(500名)に、喫煙スペースは必要だと思うか、不要だと思うか質問したところ、64.4%の人が「必要だと思う(『非常に思う』と『やや思う』の計)」と回答したそう。

 さらに、非喫煙者(500名)に、煙やにおいが漏れないような最新設備の喫煙スペースの多い街に対するイメージを聞いたところ、66.6%の人が『住みやすい・利用しやすい』と回答している。

 つまり、喫煙者を隅に追いやるのではなく、徹底した分煙対策を施すことがマナーの向上や街の美化に繋がっていくのではないだろうか。その意味では、今回紹介した誰もが入りやすいスタイリッシュな喫煙所設置の試みについては引き続き注目していきたい。