被害者の肉体的、精神的な苦痛は将来にまでおよぶもので深刻さは想像に絶する。被告人を懲役41年の刑に処す

 7月29日、福岡地裁で溝国禎久(みぞくによしひさ)裁判長がそう読み上げると傍聴席からは感嘆の声が漏れたという。

 '18年から'19年の1年半の間に女性7人に乱暴したなどして、福岡市南区の無職・今泉成博被告(44)が強盗・強制性交や強制わいせつ致傷など13件の罪に問われた。この裁判が注目されていたのには理由がある。

「本来、有期刑の上限は懲役30年なのですが、13件の罪を懲役15年と懲役25年をわけて求刑したんです。'18年7月〜19年10月の5件について懲役15年、'19年10月〜12月の8件は25年の合計で性犯罪裁判では異例の40年という求刑となり、判決の行方が注目されていました。刑事裁判では大概が求刑を下回る判決となるのですが、求刑を上回り1年プラスされるとは思いませんでした。裁判長は懲役16年と懲役25年をそれぞれ足して41年の懲役としたんです」(司法記者)

連続した性犯罪の“無罪判決”

 なぜ今泉被告は異例の求刑を受けたのか。

 その理由は聞くのもおぞましいほど卑劣な犯行の手口だった。

「起訴状によると、出会い系サイトで知り合った7人の女性をそれぞれ脅し、性的暴行を加えた上に金品を奪った。ある被害者は逃げられないように山中に連れ出された上に、熱した金属棒を膣に押し当てられ重症な火傷を負っています。

 またある被害者はクレジットカードで、コンビニエンスストアのATMから71万円を引き出させられ、それを奪った上に、性的暴行を加えられました。

 全員への手口として共通しているのが暴力団との関係性を強調したり、脅迫のために裸の姿を撮影し、逃げられないようにしたうえで女性を支配するなど悪質極まりない。被害者の人数も多く、だまし取ったお金は約570万円にのぼるといいます。ここまでの罪を犯しておきながら“同意の上だった”と無罪を主張しているところも反省をしていないとみなされたのでしょう」(同)

 性犯罪裁判において今泉被告の判決とは真逆の量刑が軽いケースが続き、厳罰化を求める世論が高まっていた。

 '19年、性犯罪裁判で無罪判決が4件続いたのだ。

「1件目はサークルの飲み会に参加した女性がテキーラを一気飲みさせられ泥酔したところを男性(44)が性行為に及んだ事件。裁判所は女性が抵抗不能だったことはを認めたにも関わらず、男性がそのことを認識してなかった、とし無罪となりました(‘19年3月福岡地裁)。

 2件目は、メキシコ国籍の男性(45)が女性に乱暴し、けがを負わせたのに“故意ではなかった”として無罪判決となった事件(‘19年3月静岡地裁)。

 残る2件は家庭内において長年にわたる性的虐待が行われた事件でいずれも無罪判決でした(一方はのちに10万円の罰金刑に)」(同)