心配なのは事故やマナー

 五輪が通り過ぎて町はどう変わるのか。

 一宮町のサーフショップ代表は言う。

荒々しい波に挑む選手を見て、サーフィンをしない人も“迫力がすごかった”と興奮していました。五輪採用が決まってからスクールの申し込みは増えており、よりポピュラー化が進むのではないか。

 ただ、自然を相手にするスポーツなので海難事故を防ぐためにも専門店などで正しい知識やレクチャーを受けてからトライしてほしい。不確かなネット情報をうのみにして、考えられない悪条件下で海に入る子もいますから。もうひとつ心配なのはマナー。飲み食いしてゴミを散らかしていくサーファーにはならないでください

 同店では月1回、スタッフ総出で海岸のゴミ拾いをしているという。

 サーファーというと、どこか不良っぽかったりチャラいイメージがあったが、最近は少し変わってきているようだ。

 前出の鵜沢さんは言う。

「いまでは幼少期からスポーツとして取り組み、コーチやトレーナーをつけて練習する子も少なくありません。次のジェネレーションは、炭酸飲料を飲まないとか食事を気にしたり、フィジカルトレーナーをつけている子もいます。

 五輪が事故なく無事に終わったことがなによりですが、“跡地を残せないか”との声も聞きます。プレッシャーがかかる中での大逆転劇を含め、みんなよく頑張ってくれたと思います。代表4人の健闘は大きな財産になるはずです」

決勝の翌日、五輪会場に隣接する海岸では多くの親子サーファーが。奥に五輪施設が見える
【写真4枚】森喜朗氏の視察を出迎える大原選手、決勝翌日の海岸など

9歳の女の子の“短い言葉”

 決勝戦の翌日、会場に隣接する海岸へ行くと、五輪の激闘に触発されたのか親子連れのサーファーが目立った。

 妻子と海に来ていた男性サーファー(57)に話を聞いた。男性はかつて、カノア選手が生まれ育った米カリフォルニア州のハンティントンビーチで生活していたことがあり、カノア選手が父親と一生懸命に練習する姿を見ていたという。五輪は連日早起きして家族とライブ配信で観戦した。

「カノアくんの銀メダルは日本の誇りじゃないですかね。これで改めてスポーツとして認知されたと思います。サーフィンはいいスポーツなんですよ。自然と触れ合い、健康的だし、親子でできるし」

 と男性はにっこり。

 そばで聞いていた小学3年の長女(9)は4歳からサーフィンを始め、最初からボードの上に立てたという。長女に五輪サーフィンを見てどんなことを感じたか尋ねると、日焼けした顔でこう言った。

「ああいう感じになりたい」

 短い言葉には、確実に思い描ける夢が詰まっていた。

◎取材・文/渡辺高嗣(フリージャーナリスト)

〈PROFILE〉法曹界の専門紙『法律新聞』記者を経て、夕刊紙『内外タイムス』報道部で事件、政治、行政、流行などを取材。2010年2月より『週刊女性』で社会分野担当記者として取材・執筆する