(2)ライバルの存在

 2人の成長過程には、素晴らしいライバルがいた。高校時代、大谷を超える評価を受けていたのが現阪神タイガースの藤浪晋太郎だった。

「大谷選手は岩手・花巻東のエースで4番、藤浪選手は強豪・大阪桐蔭のエースでした。2012年春の1回戦でついに直接対決が実現。大谷選手がホームランを打ち、勝負あったと思いきや……その後、投手としては大荒れの投球で失速。大阪桐蔭が逆転勝利を収めました」(スポーツ紙記者)

 プロ入りの際も、藤浪のほうが高く評価されていた。

「大谷選手は日本ハムからの単独指名でしたが、藤浪選手には4球団からの指名が集まりました。阪神に入って1年目から1軍で活躍し、3年連続で2ケタ勝利を記録。2015年には、最多奪三振も獲得しています。将来を期待されていたんですが、2016年から調子を落としてしまい、昨年はわずか1勝。大谷選手が“二刀流”で脚光を浴びているのに対し、現在は苦しい状況に陥っています」(同・スポーツ紙記者)

 明暗が分かれることとなった大谷と藤浪。それに対し、羽生はアメリカのネイサン・チェンと切磋琢磨を続けている。

「金メダル争いというのは上位4人くらいで繰り広げられるのが普通。でも、2人は頭ひとつ抜けている存在です。ネイサン選手はアクセルが苦手だったんですが、平昌五輪以降は克服していて今ではまず失敗しません。最近は直接対決で羽生選手が連敗している状態。前人未到の“4回転半”を跳ぶことが逆転のカギとなるでしょう」(スポーツライターの梅田香子さん)

 “宿敵”ではあるが、2人の関係は良好。これまでも、尊敬の言葉を送り合ってきた。

「2019年のグランプリファイナルの際、羽生選手が“(ネイサンは)いつもスケートをやっている意味を教えてくれる存在”と刺激を受けていることを明かすと、ネイサン選手も“ゆづは史上最高の偉人。ただ会えるだけでクールだ”とリスペクトを口に。2人にとって、互いの存在はいいモチベーションになっています」(スケート連盟関係者)

 マンガから飛び出てきたようなヒーローには、やはり火花を散らすライバルがいた。