【手立て2】
“なってから”では遅い!! 元気なうちに、早めの準備を!

成年後見制度で資産は現金化できるが……

 資産が凍結してしまったら、諦めるしかないのか?

成年後見制度を利用すれば、すべての資産を現金化することができます

 成年後見制度には「法定後見制度」と「任意後見制度」の2種類があり、「法定後見制度」はすでに認知機能障害がある場合に、家族や親族から家庭裁判所に申し立て、裁判所が後見人を選任するもの。「任意後見制度」は、判断能力が十分にあるうちに本人が、将来に備えて任意後見人を選んでおくもの。

認知症になってしまった場合は、「法定後見制度」を利用することになりますが、いくつかデメリットがあります。法定後見制度は預金の引き出し“だけ”というような、スポット運用は認められてはいない。認知症になった人が保有するすべての財産について裁判所が指定した司法書士や弁護士が管理をすることになる。家族が“財産が自由にならない状態”が本人が亡くなるまで続くのです」

 また、利用するためには家庭裁判所での手続きが必要で、手続き完了まで3か月から半年程度かかるのが一般的。さらに後見人となる人物は司法書士や弁護士などが多く、毎月報酬が発生するので財産から支払うことになる。

「使い勝手の悪さから、認知症患者はおよそ462万人といわれている中、法定後見制度を利用している人は約19万人。わずか4%ほどにとどまっています」

すべては事前の対策! 財産と家族を守る方法は?

 認知症になる前であれば、もっと柔軟な対応ができると横手さん。

「任意後見制度や家族信託がおすすめです」

「任意後見」は、家庭裁判所の管轄下にはあるが、自分が信頼できる親族や友人に、財産管理や老後生活の支援をお願いすることができるもの。「家族信託」は、家庭裁判所などは関与せず、家族や親族に財産管理や処分を任せる仕組みで、相続についてもお願いすることができる

「これらを利用していれば、資産凍結は回避できるし、不要な相続トラブルもなくなるはず。ただしどちらも、当事者双方に意思能力があるうちに申請する必要があるので、元気なうちに検討を」

 とはいえ、そもそも親にお金の話はしにくいのが正直なところ。認知症になる前提に話すなんて、親子関係がギクシャクしてしまいそうだ。

「例えば、“お父さんには長生きしてほしいけれど、認知症になると財産は凍結されてしまう。財産はすべて自分のために使ってほしいので、事前の対策として家族信託などを考えてほしい”と、親にメリットがあることを伝えるようにしてみましょう」

 認知症を予想した金銭対策はしっかり行うべきなのだ。

教えてくれたのは……横手彰太さん
老後問題解決コンサルタント。不動産会社の日本財託に勤務し、数多くの老後問題に遭遇、解決に導いてきた。特に相続、家族信託のアドバイスに定評が。講演会やテレビ出演など多方面で活躍中。著書に『老後の年表』(かんき出版)などが。

(取材・文/樫野早苗)