ここまでハードな収録現場だから、その場で出演予定だったタレントやそのマネージャーからNGが出ることも少なくなかった。

「演出の人が困ってたけしさんに相談したら、“あぁ、いいよ! ダチョウと軍団がいるからよぉ”と言って。ダチョウ倶楽部とたけし軍団は全クイズの出演予定に○がついていました。誰かがダメになったときに、ダチョウか軍団を入れろという保険ですよね(笑)。おいしいですけど、そのぶん、大変でした」

 ビートたけしの絶大な信頼を得ていたゆえのNGなし。彼らはそれに応えるための努力家でもあった。

「合間によく“さっきはここが惜しかったですよね”なんて反省会みたいな会話もしていました。ダチョウと軍団が、野球でいうクリーンナップという感じ」

 後の売れっ子芸人たちも“クリーンナップによる笑いへの姿勢”を間近で学び、羽ばたいていったという。

「ナインティナインの岡村(隆史)とか出川(哲朗)とかも出ていましたね。出川がイジられキャラで注目されるようになったのは、そこからかな」

やりすぎの「人間性クイズ」

 肉体的に過酷なクイズと両輪をなしていたのが『人間性クイズ』。出川や岡村がブレイクしたキッカケでもあり、同番組のもう1つのメインとも言える。

「人間性クイズは完全にドッキリだったので……。たしか最初に引っかかったのは僕。第2回のときで、その日は別の番組の収録があって、僕は夕食のシーンから参加。広間に案内されて座ったら、隣に元オナッターズの南麻衣子ちゃんというかわいい女の子がいて、やたら話しかけてきて、僕の大ファンだと言うんです」

 そこからすでに何もかも始まっていたらしい。

「知らないのは僕だけで、ほかの全員が仕掛け人。南麻衣子ちゃんが少し席を立った隙に、周りの芸人が“らっきょさん、あの子、イケるんじゃないですか?”なんて声をかけてくる。その気になって、“今晩もしかしたらいいコトがあるかも”と思って」

 たけしまでノリノリで仕掛けに参加して、

会話に入って来て、“あの子が僕のこと好きみたいなんです”と話すと、“いや、ありえねぇよ! もし、うまくいったら小遣いやるよ”なんて言うからアドレナリンが出て、見事に引っ掛かりましたね(笑)。夜、その子の部屋に行ったらカメラが仕掛けられていて、みんなが大広間でその様子を見ていたんです」

 これで凝りそうなものだけど、らっきょは別の回でも引っかかっている。

「『字読みクイズ』といって、ストリッパーのお姉さんの身体に文字が書いてあって、それを読んでクイズに答えるという設定なんですが、実はドッキリ。“人の裸を見ると井手は負けず嫌いだから絶対に脱ぐ”という、たけしさんの策略でした。案の定、僕が裸になってお姉さんと踊っていたら、後ろの暗幕がバタンと下りて、家族や親せき10人くらいが正座して見ているんですよ。わざわざ九州から熱海に全員呼んでいたんです。あれはビックリしました」

 親族を巻き込んだ壮大かつクレイジーな内容に当時は大ウケ。ちなみにこの番組は、クイズの正解数ではなく独断と偏見による“お笑い的なポイント”で優勝者を決めており、この回は当然ながら彼が優勝。けれども「おめでとう」だけでは終わらせてくれない『お笑いウルトラクイズ』のエンディング。