高倉といえば、私生活を厚いベールで覆う神秘性も特徴のひとつだ。

「僕が休日にホテルのプールで身体を焼こうとしたら、『お前、金取れねえな』と高倉さんから言われたことがあります。そんなことをしたら、人に見られて『昨日、谷が隣でオイル塗って身体焼いてたぞ』などと言われてしまうから。

 健さんは身体を焼くためにわざわざハワイに行くし、食事はお客さんが全員帰った後に知人の店を貸し切り。自分を“映画館でしか見られない人”にするため徹底していたんです。健さんからは常々『役者は生き様を見せるものだ』と言われてきました。僕は、あの人が最後の映画俳優だと思っています」(谷さん)

「女優は魂が入れ替わる」

 高倉から薫陶を受けた谷さんも役者魂の伝わるエピソードを持っている。彼が主役を務めた映画『ワル』に、「お前の目は飢えた狼の目だ」と谷さんが言われる場面があった。

「自分を本当に“飢えた狼”にしておきたかったから、衣装合わせを含め約40日間は一切夜の営みをしませんでした。そのころはガールフレンドがいっぱいいたんですけど(笑)」(谷さん)

 今までの俳優歴の中で、谷さんが「いちばん芝居がうまい!」と断言する女優は小川真由美だ。

「『アイフル大作戦』('73年・TBS系)というテレビ映画で彼女と1年間ご一緒したんです。監督は深作欣二さんなんですけど、現場入りしたら2人の『台本のここが違う!』というやり合いが朝から必ず始まっていて。だけど、カメラが回ると抜群にカッコいい人でした」(谷さん)

 女優の恐ろしさは、竹山さんも骨身にしみている。

「私が脚本を書いたドラマの稽古があるからとNHKに見に行ったら、三つ指ついて座っている人がいるんです。『いい女がいるなあ』と思ったら、かたせ梨乃ちゃんなんですよ。びっくりさせようとしたわけじゃなく、脚本家が来るということで敬意を表してやったと思うんですけど、あんなふうにやられたら普通の人は太刀打ちできませんよ」(竹山さん)

 女性ならではの力を感じさせる存在としては、寺島しのぶという女優も欠かせない。

「寺島さんは不思議な女優で、美人で売っている人ではないけれど、役に入るとものすごく美しくなる。情念のある役をやると『なんていい顔してるんだ』と思わせてくれるんです。

 トム・クルーズはビルからビルに飛び移ったり、どんな映画にもスタントマンを使わず、全部自分でやる肉体的なアプローチの役作りをしますよね。でも、女性は基本的には肉体的なアプローチの方法をとらない。魂が入れ替わるというか、いきなり別人になる。そこに私としては女の怖さ、すごさを感じますね」(竹山さん)