2020年1月、ジャニーズグループ『Snow Man』と『SixTONES』が“合作CD”をリリースして同時デビューを果たした。双方の所属レコード会社は別であることから“Snow Man盤”と“SixTONES盤”と区別して、ファンが明確に選択できる販売形態としたのだ。するとーー。

「翌日のデイリーランキングを確認してか、販売枚数で負けていたグループのファンがSNS上で“購買運動”を呼びかけて、次の日のランキングではライバルを追い越した。すると同様に、次の日にまた追い返して3日目でミリオンを達成。その繰り返しで最終的には170万枚を越す大ヒット。滝沢秀明副社長の戦略が見事に当たったのです。

 またデビュー曲ではありませんが、2000年代には宇多田ヒカルと浜崎あゆみが3月の年度末に同日リリースしたことがあります。本人たちにそんな気はなくとも、競争や対決の形になれば我々も記事が作りやすくなり、刺激を受けたファンや読者を煽りやすくなります。“煽り商法”とでも言いますか(笑)」(音楽雑誌編集者)

 デビュー日やリリース日をあえて被せることでメディアを巻き込み、アーティストを応援するファンを動かすことができる。SNSが広く浸透した今、一度火がつけば勝手に拡散されるので、理にかなった商法なのかもしれない。

「見える化」で“推し活”が加速

 さらにファンの“推し活”に拍車をかけているのが、応援する努力と結果を実際に目にする機会が増えたこと。「現在は、ファンの細かな行動が“見える化”されています」とは前出の品田氏。

「CDには日ごとに変動するデイリーランキングがあり、YouTubeでも視聴したら再生回数“1”がカウントされたりと、応援しているグループとの関わりが数字として明確に見えるのでファンも推しがいがある。このように“推し”との関わりが具体的に見えるようになったのも、“推し活”がより楽しくなった要因だと思います」

 一方で、『BE:FIRST』と『INI』のデビュー対決の背景には、さらに大きな利権が絡んでいるとも。

「それぞれの番組には日テレさんとTBSさんがサポートしています。自局の番組で露出を増やしてデビューを盛り上げていくことでしょう。いわば、どちらのオーディション番組がより優れたグループを生み出したのか、彼らはそんなテレビ局の“代理戦争”を背負わされたとも言えます。

 勝利した番組はさらなる視聴率、動画サービスの加入者数にもつながりやすくなる。もはやデビューを目指す若者の夢だけではない、オーディション番組はさまざまな思惑と利権が絡むビッグビジネスになっているのです」(前出・音楽雑誌編集者)

 11月3日、最後の“審査”を勝ち抜くのはどちらのグループか。