高齢期にはお金より、人の貯金が大切

【9】ガタがきたら冷蔵庫を人に見せなさい

「理学療法士の方が、『介護をされるのをいやがる方も多いんですよ』とおっしゃっていました。プライドや体裁を気にし、人の世話になりたくない、他人には家に入ってほしくないという方もまだ多いようですね」。

 とはいえヨタヘロ期を快適に安全に過ごそうと思ったら自分のプライバシーを開いていくしかない。

「女性のなかには年をとっても、台所は自分のテリトリーという感覚の方も多いのでは。でも、お世話になるとなったら、他人に冷蔵庫を明けてガサガサされても、家事のやり方が自分と違ってもムカッとしない度量の広さが大切。食事や排泄が自分でできなくなったとき、『やってください、ありがとう』と率直に言える“ケアされ上手”になりたいものです」

自分でできなくなるのは恥じゃない! 気持ちよく人を頼って ※写真はイメージです
【写真】老いた後も生き抜く方法を教えてくれた、評論家・樋口恵子さん(89歳)

【10】おひとりさまの老後に人間保険のすすめ

「妻を亡くし、おひとりさまとなった男性が3つの保険に入ったと教えてくれました」。保険とは金融商品ではなく、人間関係の保険。1つ目はマンションの自治会の役員を引き受けたこと、2つ目は市民講座運営委員の委員になったこと、3つ目はカラオケサークルに入ったこと。

「“保険先”にはひとり暮らしであることを公表したそう。倒れたり亡くなっていたとしても誰かが見つけてくれるはずだからです。高齢期にはお金より、人の貯金が大切なのです」

自分が楽しみつつ、人脈を確保するのがいちばんです ※写真はイメージです

【11】グリーフケアができる家族や友人を持って

 家族や友人、ペットに先立たれたとき、ひとりの時間が多い高齢者ほど、深い悲しみから立ち直れず、日常生活が送れなくなってしまう人が少なくないのだそう。「私の友人は、悲しみを癒すためのグリーフケアとして、お友達同士でLINEのグループを作りました。それぞれ言葉をかけあうことで、生きる力に結びつくと思います」。

 電話でやりとりするのもいい。何かあったら、お互いに話ができるような、家族や友達の存在を大事にしたい。

【12】終活である断捨離はいっそあきらめる

 一般に子どもというのは老いた親に「片づけろ」と言いたがる。「高齢者にとっては昔のものを手放すことはつらいし、思い出がつまった物は見ているだけでも幸せな気分になれるもの。物を選別する気力も体力も乏しく、意外と重労働なのです」

 樋口さんは、ガラクタも残すが、遺産も残すと宣言。「処理費用は残すから、私が死んだあとに捨ててちょうだいと子どもに伝えています」。心苦しく思うより、毅然として片づけを拒否してもよいのだ。

お話を伺ったのは……樋口恵子(ひぐち・けいこ)さん
1932年生まれ。評論家。NPO法人「高齢社会をよくする女性の会」理事長。東京家政大学女性未来研究所名誉所長。『老いの福袋』(中央公論新社)など著書多数。

《取材・文/樫野早苗》