■首相、大臣、ヒラの議員って給料、いくらもらってる?

国会議員の歳費、旅費及び手当等に関する法律」によれば、国会議員の歳費(給料)は月に約130万円、年2度の期末手当を加えると年収は2000万円以上に。ちなみに首相は約240万円、年収で4000万円を超える。

 ほかにも国会議員は、公的文書の発送費や電話代、交通費のための「文書通信交通滞在費」が月100万円、立法に関する調査研究活動のための「立法事務費」が月65万円、支給されている。さらに国内のJRや航空便も無料に。

「昨年、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、国会議員の給与に当たる歳費を2割削減する改正法案が今年4月に成立し、今年10月までは減額されていました。ただ、11月からは通常どおりに戻る予定です

 国税庁の最新統計によると、民間企業で働く人の平均年収は433万円。庶民感覚からすれば国会議員の給料は十分に高い。その報酬に見合った働きをしてほしいものだ。

■総理大臣には何度でもなれる?

 同一人物が複数回、総理を務めることは意外と珍しくない。初代首相の伊藤博文は15年の間に4回総理を務めているし、吉田茂は歴代最多の5回。安倍晋三元首相は2回だが、連続在職日2822日で、自らの大叔父である佐藤栄作内閣の記録を24日更新、憲政史上最長となっているのだ。

「アメリカの大統領は1期4年の2期まで。その後は同じ人物が大統領になることはできません。また、韓国大統領は1期5年と期限が決まっています。しかし、日本の首相の任期は法律で制限されていないので、同じ人物が何度も首相になることができます。長期政権は政策にじっくりと取り組めるので“政治が安定する”とよく言われますが、長く続くことで権力が強くなり、独裁化するおそれもありますね

 安倍元首相は組閣の際、「お友達人事」といわれる身内で固め、安保関連法などの重要法案も強行採決で可決させた。今回の総選挙で、その流れは変わるのだろうか?

■「派閥」って必要? 何のためにある?

「政治家における派閥といえば、今はイコール自民党の派閥のことです。二階派、麻生派、岸田派と人名を冠した名で呼ばれることが多いですが、正式な名前があります」

 ちなみに、岸田現総理の属する派閥は「宏池政策研究会」。安倍元首相は「安倍派」ではなく、「清和政策研究会」(細田派)に属している。

「派閥の最も重要な役割は総裁選のための票固めです。国政選挙では同じ派閥の候補の支援・応援に入り、政治資金も調達します。選挙にまつわる人脈のつながりはあるけれど、協力にあたって政策的な方向性は関係ないようです」

 ちなみに「宏池会」は自民党内ではリベラル色の強い派閥で、岸田氏は憲法改正にも慎重姿勢だった。

「しかし今回の総裁選以降、岸田氏は憲法改正を目指す意向を示しています。いまだ自民党内で大きな影響力を持つ安倍元首相への配慮ではないかとみる動きもあるようです」

■誰が当選しても一緒でしょう?

 与党の政策も信用ならないけれど、野党は野党でなんだか頼りない。信頼できる候補が選挙区にいない! だったら、せめて白票を投じたい……。

「気持ちはわかりますが、白票には何の意味もないのでやめましょう。選挙で入れたい人がいなくても、入れたくない人はいるのですから、だったら、よりましな、よりベターな候補に投票すること。それだけでも社会は少しだけ変わるはずです」

 自分の1票なんて何の影響力もない──、そう思うのは間違いだ。選挙区によってはほんの数十票の差で当落が決まるような例もある。

「投票したい候補者がいなくても今の政治に不満があるなら、政権交代につながるような投票をしてみるのもいいのでは?」

 今回の衆院選は、これまでの政治の流れが大きく変わる節目にあるのは確かだ。この流れに、自分の1票を投じることで、選挙はきっとおもしろくなるはず!

  ◇   ◇   ◇  

【岩本美砂子さんプロフィール】1957年広島県生まれ。京都大学法学部卒業。名古屋大学法学研究科博士課程満期退学。名古屋大学助手などを経て、1996年三重大学人文学部教授。近著に『百合子とたか子:女性政治リーダーの運命』

取材・文/岩崎眞美子 フリーランスライター。1966年生まれ。音楽雑誌の編集を経て現職。医療、教育、女性問題などを中心に雑誌や書籍の編集に携わる。