歌舞伎役者の二代目中村吉右衛門さんが、11月28日に亡くなった。

今年の3月28日、公演後に訪れたレストランで倒れ、心肺停止状態に。『楼門五三桐』に石川五右衛門役で出演していて、千秋楽を残すだけでした。救急搬送されて一命をとりとめますが、しばらく意識不明の状態が続いたといいます。回復してからはリハビリに取り組むものの、復帰は叶わず。

 歌舞伎界きっての立役で、人間国宝に認定されています。歌舞伎だけでなく、テレビや映画でも活躍。フジテレビ系の『鬼平犯科帳』では主演を務め、幅広い人気を得ました」(スポーツ紙記者)

尾上菊之助が声を震わせて

 倒れてからの詳しい容体は、ずっと伏せられていた。

「後に意識がない状態だったことが明かされましたが『七月大歌舞伎』のポスターには出演者として吉右衛門さんの名前が掲載されていました。入院中の様子は血縁者や松竹の幹部クラスのごく一部しか聞かされていなかったようです」(同・スポーツ紙記者)

 死去から4日後の12月2日、吉右衛門さんの娘婿にあたる尾上菊之助が取材に応じて思いを語った。

「岳父は全身全霊をかけて芝居に打ち込まれました。先人たちがつくり上げた教えを守って、血と汗と涙の結晶をさらによいものにして後世に伝え、現代の歌舞伎を進化させてくださいました。私たちは、その教えを守って後世に伝えられるように、研鑽していきたいと思っています」

 声を振り絞るようにして、吉右衛門さんへの感謝の言葉を述べる。故人の普段の姿について質問されると、目から涙があふれ出た。

「3月に倒れる直前、自分もつらかったはずなのに、当時、腕を骨折していた私のことを心配してくれた。尊敬するとても優しい父でした……」

 声を震わせ、手で目を覆う。

「岳父の芝居を愛してくださったみなさま、本当にありがとうございます。岳父のこと、中村吉右衛門のことを忘れないでください」