新しい変異ウイルス「オミクロン株」が誕生。WHOは「危険性が非常に高い」と発表した。アルファから数え、今回で13番目の変異ウイルス。南アフリカで生まれたのはある理由が? なぜこれほどまでに次々と変異は増えていくのか。ワクチン接種を重ねることで変異が増加? さらなるパンデミックを医師が解説する。

実は“変異”は100万以上起こっている…!

 ここ数年、人類を苦しめ続けている脅威が、姿を変えてわれわれを襲おうとしている。新型コロナの“変異”ウイルス『オミクロン株』だ。そもそもなぜ変異は起こるのか。

「今回の新型コロナのようなRNA型のウイルスというのは非常に単純な構造です。生物学的にウイルスの生態として、環境に合わせて自ら構造を変えるというような“判断”をする能力は一切ありません。確率の話で、生物学的に変化は起こるもの。また、それらはすべて“偶然”起こります。新型コロナの変異ウイルスが生まれるのは、生物学的なこの原則によるものなので、変異はいくらでも起こりえます」

 そう話すのは、新潟大学名誉教授で医療統計の第一人者と呼ばれる医学博士の岡田正彦先生。

「実は新型コロナウイルスは、数え切れないほどの遺伝子の違いが発見されています。国際的な機関の調査で遺伝子の違いは、すでに100万種類以上報告されています。これは人間でいえば“個人差”のようなもので、変異株というほど大げさなものではないのですが、それくらい絶えず起こっていることなのです。

 そのなかで感染力や病原性、ワクチンに対する抵抗性などに関わる部分に重大な変化があったときに、“変異株が現れた”と定義されます。今回のオミクロン株がそうなのですが、例えばウイルスが人間の細胞に取りつく手足の部分に大きな変化があってガッチリくっついてなかなかはずれないという変異があったときに、人間にとって重大な脅威になる」(岡田先生、以下同)

 ではなぜ“変異ウイルス”は生まれるのか。

「さまざまな変異が起こっているなかで、たまたまある人に取りついたウイルスがあり、その人が強力な中和抗体を持っていた、もしくはワクチンを打った後で新鮮な中和抗体を持っていた場合、そのウイルスは生き延びられません。

 しかし、人間に取りついたウイルスの中には従来のワクチンが効かないようなウイルスがいたり、まれにワクチンに負けない変異を起こしたウイルスも確率的にいるのです。たまたまウイルスにとって都合のいい変異を持ったウイルスが生き延び、細胞の中に入り込む。それが呼吸器などを通して他人を感染させ、そして世界中に広まる」