オミクロン株が危険変異株といわれる背景

 オミクロン株が発見された南アフリカは、アストラゼネカ社のワクチンの治験を行ったことで知られる。

「南アフリカは接種システムがバラバラで、あるところで接種したが、2回目は全然別の場所で打つといったケースが多いと報じられています。今年の5月に南アフリカの科学技術省の研究者が“アストラゼネカ社のワクチンは効かない”という発表をし、輸入を止めました。効果がないという理由は、ベータ株というアストラゼネカ社のワクチンによって生じた中和抗体に負けない変異株がたまたま生まれたからです。

 総合すると、南アフリカは2種類のワクチンを接種した人、感染してから接種した人、接種してから感染した人がすごくごちゃ混ぜになっているという状況が、ほかの国より多いのではないかと思います。そうなるとこれまでお話ししたウイルスのメカニズム、変異する確率が増えることになります」

 オミクロン株が発表されたのは11月25日。

「南アフリカの研究者はかなり時間をかけて丹念に遺伝子解析をし、感染者の追跡をしていたはずです。そのうえでのマスコミ発表になりますので、かなり前からあったと考えられます。今日時点でオミクロン株の感染者は日本では2例ですが、もっとたくさん入っている可能性も(編集部注・6日、日本人の感染が初めて確認され、国内では3例目となった)。すでに手遅れではないかと私は思います。先日まで海外から外国人は入国できていましたから。

 11月30日から入国が厳しくなったわけですが、それでも厳しいとはいえず、オミクロン株に感染していた人と同じ航空機に乗っていた人たちは隔離されず自宅待機となっています。家庭内感染が起こっていてもおかしくない」

 では、オミクロン株は“危険”なのか。

「オミクロン株が要注意、危険変異株といわれる背景ですが、オミクロン株は遺伝子変異の“箇所”が多い。例えばほかの変異株より危険だといわれた『デルタ株』の場合は、10か所の変異が見られた。南アフリカで発見され、同じく要注意変異株とされた『ベータ株』は6か所。対してオミクロン株は26か所の重要な変異が見られた。30以上などともいわれていますが、病原性・感染性に影響しないものも含めると30以上あるだろうということです」

 変異の“数”は重要なのか。

「遺伝子の変異だけ見た専門家たちは、要注意だと思われるが、まだ証明ができていないとしています。変異がいっぱいあるから危険だということにはならない。今、『シュードウイルス』というものを使った研究が進められています。シュードとは“擬似”という意味。人工的に作ったウイルスを使った研究です。複数の大学やメーカーで行われていて、あと数日のうちに結果が出るといわれています。

 きちんとした調査によって“本当に危険なのか”今日現在はまだわからないんですね。感染力は強そうですが、重症化しやすいのかどうかわからない。ワクチンが効くかもわからない。ちなみにメッセンジャーRNA型のワクチンは簡単な構造のため本当に数日あれば作り変えられます」

※岡田先生の集めた研究データより作成
※岡田先生の集めた研究データより作成
【写真】死亡率が高いのは…コロナ変異ウイルス一覧

 人間が身体を守る行為をすることによって、ウイルスは姿を変える。このようなことを人類は繰り返してきた。

「例を出すとインフルエンザ。インフルエンザには特効薬としてタミフルがありますが、それが効かなくなってきている。1つの理由として日本人がタミフルを使いすぎていることが世界的に指摘されています。確率的に変異が起こるウイルスのうち、たまたまタミフルに負けない変異を持ったウイルスも生まれる、結果的にそれが世の中に広まってしまっている。それと同じ状況の話かと思います」

 この脅威はいつ終わるのか。終息は見えない。