九州大学の研究では、40代以上の住民8000人に対して調査したところ、約2割の人にこの血糖値スパイクが見られたそうです。

 同じような状況が起きているとすると、日本全体では1400万人以上もいる計算となり、私達が予想している以上に、仕事に集中できない、やる気が出ないなど悩みを抱える人が多いかもしれないのです。血糖値スパイクで、血液中のブドウ糖が不足すると、脳もエネルギー不足を引き起こします。

 つまり、どんなにたくさんのエネルギーを補充しても、脳のエネルギーとなるブドウ糖が一気になくなってしまい、集中力、記憶力、実行機能、認知力、セルフコントロール力など、脳がつかさどっている多くの力が衰えてしまう可能性があるのです。その結果、会議中に眠くなるというわけです。

 私自身もこれまで13年ほどビジネスで成功している人を研究してきましたが、仕事の効率やパフォーマンスが高い人ほど、食事に気をつかっているという共通点がありました。

 そして、ここ20年の脳科学、生理学、行動科学など世界のリサーチからわかってきた脳のパフォーマンスを高める1つの方法、それが、「低GI食」をうまく利用する、ということだったのです。

「低GI」を選ぶための3つのポイント

 低GIというとダイエットの分野で有名なためご存じの方も多いかもしれませんが、GIとは、グリセミック・インデックスの略で、食品に含まれている糖質がどれだけ血糖値を上げるかを、ブドウ糖を100として相対的に表した数値になります。100に近いほど血糖値が急激に上昇し、低いほど血糖値の上昇がゆるやかになります。1981年に、カナダのトロント大学のジェンキンス博士らが、同じ糖質量でも食品によって血糖値の上がり方に違いがあることを発見し、提唱しました。

 GI値が低い食品(低GI食)を摂取すると、ゆるやかに血糖値が上がり維持されるため、血糖値スパイクを防ぐことができ、安定的に脳にエネルギーを供給できるようになります。脳は体全体の20%のエネルギーを消費している組織。考えたり、覚えたり、計算したり、思い出したり、体を動かすときに指令を出したり、ただ、立っているだけでも、大量のエネルギーを消費しています。糖質は脳にとっての唯一のエネルギー源のため、ブドウ糖を安定的に供給できると、脳がベストパフォーマンを発揮できるようになります。

 実際に、スウェーデンのランド大学が行った49~71歳を対象とした研究でも、低GIのパンを食べると75〜225分後の認知テストのスコアが上がったり、フランス・ナンシー大学のリサーチでも若い成人が低GI食を朝食に食べると、150〜210分後に記憶力が改善されることなども報告されています。

 低GI食は毎日摂ることが必要ではなく、ここぞというときに利用すると、脳をよいパフォーマンスへと導いてくれることが数々の研究でもわかっています。