市長の落選運動がスタート

 東恩納市議はこう怒る。

「市議会の承認を得た説明内容と、実際の事業計画が食い違っているわけですから、地方自治法上、『サーバント』が所有権を取得したことについて改めて議会にはかる必要があります。ところが市は拒み続けているのです」

 一方、市の担当者に文書改ざんについて聞くと、「プレゼン内容に問題があり議会承認前に修正してもらった」と2種類の文書の存在は認めたものの、偽造は否定した。これに対し東恩納市議は「2つの文書の日付は同じで、議会承認のために意図的に内容を変更したのではないか」と指摘する。

 一連の疑惑を受けて、地元では市民有志による落選運動がスタート。1月8日には弁護士・郷原信郎氏を講師にオンライン学習会が開かれた。昨年の衆議院議員総選挙で郷原氏は「あっせん利得疑惑の説明責任を果たしていない」と訴え、甘利明幹事長(当時)の落選運動に成功している。

 今回の名護市長選について郷原氏は「渡具知市長の義兄が執行役員を務める会社の子会社に優良市有地を売っていた」と問題視、落選運動への参加理由に挙げている。「市有地売却で新疑惑急浮上」などと銘打ったチラシも作成、辺野古問題とともに「全国国民が注目を」と呼びかけた。

 県民の度重なる反対にもかかわらず新基地建設が進む辺野古では、海底に軟弱な地層が見つかり、地盤改良のため工事計画の大幅な変更を余儀なくされる事態に。工事の長期化は避けられない見通しで、2兆円以上の巨費をかけても欠陥基地にしかならないおそれが指摘されている。

 12月に新基地予定地周辺の貴重なサンゴ群落をグラスボートで見た郷原氏は「市長選では辺野古問題の議論が不可欠。争点はずしを続ける渡具知市長は落選させるしかない」と断言、環境破壊を伴う無駄な税金投入になりかねないとして、全国民にも関係する重大な問題と訴えているのだ。

 8日の学習会で郷原氏は市民からの疑問点に答えた後、次のように締めくくった。

市有地売却で渡具知市長は説明責任を果たしていない。どう考えても米軍基地が原因の感染爆発にも、辺野古新基地建設にも異を唱えようとしない。渡具知市政では市民の命・暮らし・財産は守れない。名護市の未来は破壊されようとしているのではないか」

 落選運動がどこまで広がるのか。1月16日告示の名護市長選の結果が注目される。

取材・文/横田一 フリージャーナリスト。多くの雑誌やネットニュースで記事を執筆、『仮面 虚飾の女帝・小池百合子』(扶桑社)ほか著書多数。インターネット動画ニュース「デモクラシータイムス」で「横田一の現場直撃」を公開中