ブレイク間違いなしの“鉄板コース”とは

 もちろん、ほかにもネクストブレイク候補の若手俳優はたくさん。そんな中でも、青田買いが好きな人にはぜひ注目してほしいドラマが『もしもイケメンだけの高校があったら』だ。

「『ビーチボーイズ』と『花ざかりの君たちへ〜イケメン♂パラダイス』は定期的にリメイクすべきだと主張している私としては見逃せないドラマです(笑)。3年前に『PRINCE OF LEGEND』というLDHが制作した作品があったんですけど、“王子が大渋滞”というコンセプトでなになに系王子っていうのがこれでもかと出てくるんですね。そのフォーマットで秋元康さんがドラマを作ったらどうなるのかというのがこの作品。主演の細田佳央太さんは『ドラゴン桜』で学習障害のある子、『恋です!~ヤンキー君と白杖ガール~』では全盲の子と難しい役をやっていましたが、彼が演じるとハンデを暗く感じさせない愛すべき役になるんです。すごく面白い役者さんだなと思います。このドラマの生徒役のイケメンたちはネクスト・ネクストブレイク俳優なので、ここでツバをつけておいて損はないです(笑)」

 ところで、近年のブレイク俳優を見ていくとある傾向があることに気づく。特撮から朝ドラという流れだ。『侍戦隊シンケンジャー』から『梅ちゃん先生』の松坂桃李、『仮面ライダーフォーゼ』から『あまちゃん』の福士蒼汰、『仮面ライダーW』から『ごちそうさん』の菅田将暉などなど、ここに乗ればブレイク間違いなしの鉄板コースなのだ。

高橋文哉さんも板垣李光人さんも元仮面ライダー。特撮って1年かけて撮影するじゃないですか。そこで芝居のイロハを叩き込まれてから朝ドラでガツンと知名度を上げるというのがブレイクの美しい形なんだと思います。なので、この2人の出演も近いうちにあるのではないでしょうか。

 もう一つ、最近ブレイクのきっかけになっているのがBL系ドラマです。『おっさんずラブ』の大ヒットを機に数多くのBL作品がつくられるようになって、そこに将来性豊かな若手がどんどん投入されているんです。去年も『チェリまほ』(『30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい』)で赤楚衛二さんと町田啓太さんがブレイクしましたし、『消えた初恋』ではなにわ男子の道枝駿佑さんと、Snow Manの目黒蓮さんが主演とジャニーズまで進出してきた。最近の男女のラブストーリーがキュン系に特化されているのに比べると、BLというフックがあるから逆に王道の純愛ラブストーリーをやれるんですよね。で、イケメンにそれをやられると女子はバタバタと倒れちゃう(笑)」

 そんなネクストブレイク俳優たちのなか、ほかとは違う存在感を放っているのが二世俳優たちだ。1月クールにも『ファイトソング』の窪塚愛流(窪塚洋介の息子)、『ゴシップ』の寛一郎(佐藤浩市の息子)、『鎌倉殿の13人』の市川染五郎(松本幸四郎の息子)などが次なるブレイクを狙っている。

寛一郎
寛一郎

私、二世俳優成功の秘訣の1つが兄弟であることだと思っているんです。古くは坂東妻三郎さんの息子の田村3兄弟(田村高廣、田村正和、田村亮)から、高嶋政宏&政伸兄弟、松田龍平&翔太兄弟、柄本佑&時生兄弟、新田真剣佑&眞栄田郷敦兄弟と兄弟の二世俳優はどちらも成功している例が多い。二世の大変さって、どうしても親の影がチラついてフラットな目で見てもらえないことだと思うんですけど、兄弟であることで親の印象が薄れるんですよね。しかも、なぜか二世の兄弟って個性が全然違うから、このふたりが兄弟なんだっていうのにびっくりしちゃって親にまで気が回らなくなる。兄弟であることでプレッシャーも二分できるし、いいこと尽くしなんですよね

 かつて二世といえば、親の七光り頼りになるケースも多かったが、昨今の二世たちはその点でもかなり印象が違う。そもそも親の威光を借りることを潔しとせず、太賀(現仲野太賀、中野英雄の息子)や趣里(水谷豊&伊藤蘭の娘)、SUMIRE(浅野忠信&CHARAの娘)などあえて苗字を外して、違う名前で勝負する人も多い。

太賀
太賀

「寛一郎さんなんかもそうですよね。彼の場合は二世というよりも三世ですが。むしろ二世として苦労したのは彼の父親の佐藤浩市さんですよね。三國連太郎さんの晩年にようやく、映画『美味しんぼ』で共演。海原雄山と山岡士郎の親子の確執にふたりの関係性が重なって、感慨深かったです。いつの日か、今度は浩市さんが海原雄山、寛一郎さんが山岡士郎でやってほしいですね(笑)。

 歌舞伎俳優さんは仕事も親の名前を継ぐのも当たり前ですから、ジュニアであることに葛藤はないし、自覚もある。市川染五郎さんは8代目ですからね。染五郎さんのお父さんの松本幸四郎さんも父親の松本白鸚さん主演の大河ドラマ『黄金の日々』に出演していましたし、やはり歌舞伎俳優の息子はドラマでも大河という華やかな舞台を踏んでいくんだな、と。

 二世俳優は親の名声という確固たるものがあるから、二世であるという葛藤さえ乗り越えられれば強いんですよ。特に芸能は何よりも才能がものを言う世界ですから、これからはますます二世、三世の俳優さんが活躍すると思いますよ

 このようにブレイク俳優にもさまざまな形がある。これからどんな道を通って花開いていくのか……? そんなふうにお気に入りの俳優の未来を想像しながら冬ドラマを楽しむのも面白いかもしれない。


Profile●カトリーヌあやこ…漫画家、ドラマウォッチャー。『週刊ザテレビジョン』にてイラストコラム『すちゃらかTV』、『週刊朝日』にて『てれてれテレビ』を連載

取材・文/蒔田陽平