新たな事業形態でサービス提供

「カラオケ白書2021」によると、カラオケ導入対象となる酒場施設数は、全国で13万4287軒。白書中の酒場とは、主にクラブ、スナック、パブ、居酒屋などを意味する。カラオケボックスだけではなく、こういった施設に対しても感染防止対策を徹底することが求められる。

 吉田さんは、こうした業態に対しても実証実験を重ね、呼気を排気口(換気扇)まで導く、風の流れを店内に作ることが大切だという解決策を導いた。

チェックリストを作り、換気対策、予防対策などを守っているお店に関しては、ガイドライン実施宣言ステッカーを発行するようにしています。'21年からは、試験に合格した点検認定者が店舗に赴き直接点検チェックする第三者認証の体制を徹底しています。われわれの調査では、クラスターが発生しているのはステッカーのない店舗です」(片岡さん)

賑わうネオン街の様子 ※写真はイメージです
賑わうネオン街の様子 ※写真はイメージです
【写真】新形態カラオケ店続々、セルフエステができるお店まで

 また、マスクを装着したままカラオケを楽しめるよう、歌声がこもらずに気持ちよく歌える設定の「マスクエフェクト」(JOYSOUND)や「マスクで歌う」(DAM)など、業界、メーカーが一枚岩となり、安心して利用できる工夫をしている。

 そんななか、1月13日には山梨県において、新型コロナウイルス対策の当県認証カラオケボックスで18人ものクラスター感染が発生してしまった。

成人式が終わって居酒屋で1次会の後、2次会で利用されたようで、はたしてカラオケボックスが感染拡大の場になったかは疑問です。ただ、多人数でありながら利用者全員の連絡先を把握できていたことは救いでした」(片岡さん)

 その一方で、客足がなかなか戻らない、休業時に失ったアルバイトが戻らずに人手不足にあえぐといった現実もある。

 そのためカラオケボックス事業者は、さらなる一手を打ち出す。個室をカラオケとは異なる形で提供するサービスだ。例えば、テレワークスペースとして好きなときに利用してもらう、ライブ・ビューイングを大画面・大音量で楽しめる、さらにはフィットネス器具を導入し簡易ジムスペースとして貸し出すなど、驚きの進化を遂げている店舗まである。

「“カラオケ=歌う場所”という概念を覆すことで、より多くの需要を取り込み、カラオケルームに新たなエンターテイメント空間としての価値を提供したいと考えたためです」

 と語るのは、前出の島村さんだ。

 JOYSOUNDでは、自宅では味わうことのできない大音量・高音質の映像視聴が楽しめる「みるハコ」を展開。コロナに伴う無観客ライブ配信需要が高まる背景を受けて導入した。また、直営店では実験的な取り組みとして、セルフエステも提供。2021年は2店舗、2月中旬からはJOYSOUND名駅三丁目店で実施予定だ。

カラオケでセルフエステを提供するお店も…… ※写真はイメージです
カラオケでセルフエステを提供するお店も…… ※写真はイメージです

「セルフエステは、期間限定の展開ですが、カラオケ同様、利用時間ごとのわかりやすい料金で通いやすいと、リピートされるケースもありました。また、『みるハコ』は、カラオケルームならではの迫力の映像、音響でライブの興奮を味わうことができるとご好評をいただいています」(島村さん)

 音響、映像、防音設備が整った個室空間であるカラオケルームだからこそ、アイデア次第でさまざまな活用法があるというわけだ。