感染の疑いが出た際の対応策

 東京の八王子市は地域の病院・医師会と連携し、開業医向けウェブセミナーを実施して、発熱外来を増やす取り組みを進めている。ただし、既存のクリニックでも発熱外来を新規に行う場合は、さまざまな書類を提出し、設備や計画を整え、国に申請をしなければならない。国の認可を得て初めて保健所と同等の機能を有する発熱医療機関と認定され、公費で検査を行うことができるが、その敷居は高い。

 検査キットの不足も重大な問題となっている。東京都は症状がなくても希望すれば誰でも無料で受けることができるPCR検査を昨年12月25日から始めたが、検査希望者は増える一方で、当初の終了予定だった1月31日から2月13日まで延長を決定した。政府としては減らしたいはずのPCR検査に頼らざるをえない状況は続いており、その検査すらパンク寸前だ。

「抗原検査のキットも大幅に不足していて、当院も1月6日あたりからは追加注文ができないような状況でした。現在は医療機関に優先配布されるようになりましたが、まだ潤沢に回っているという状況とはほど遠いです。

 一方でPCR検査のほうも委託会社に殺到しているようで、検査結果が出るのに2~3日以上かかるような状況。なかには1週間ほどかかってしまっているというクリニックもあると聞いています」

 不足している発熱外来も検査キットもすぐには解消の見通しは立たない。そんななか、もし自分に感染の疑いがある症状が出た場合、どう行動すべきなのだろうか。

「本来はすぐに医療機関で検査を受けていただきたいですが、このような状況下ですぐに診察や検査を受けられない可能性も高いです。電話がつながらない場合もあると思いますが、諦めずにどうにか医療機関の予約をしてほしいですね。

 市販のキットを使って自分で検査をするのもひとつの方法ですが、鼻に綿棒を入れる検査の場合は結構難しく、偽陰性を招く可能性もあるという認識は持っておくべきです。診察を受けられなくて疑わしい症状があった場合は、念のために1週間ほど自主隔離を行って感染を広げないようにするという選択も必要となります」

 発熱外来難民となる日もそう遠くない今、政府には今回の大誤算をどうにか取り返し、医療体制の迅速な拡張を進めてほしいと強く願う。

土屋 裕先生  日本内科学会総合内科専門医、日本呼吸器学会呼吸器専門医、日本アレルギー学会アレルギー専門医。昭和大学の関連病院や海外で20年ほど活躍し、2020年に『豊洲 はるそらファミリークリニック』(東京都江東区)を開業。発熱外来、PCR検査、コロナ患者の往診も実施。


取材・文/吉信 武