“みんな”とは2人だけだった

――ただ、子どもからの“みんなが持っているから”というのは、親として引っかかる部分だと思います。SNSでも「みんなが持っているのに買ってあげないのは可哀想」なんて声もありましたが、それについてはどう思われましたか?

「娘とあとから話してわかったことですが、“みんな”とは学校の友達2人でした。もちろん同級生が手にしているものを持てない疎外感はあると思います。

 例えば、娘はバイトをしているので、“バイトでお金を貯めたけど、どうしてもあと少し足りない!”というおねだりだったら、買ってあげたかもしれません。いきなり“みんな持っているから買って”とは、話が違うと思うんです」

――ツイートでは、パパ活について心配されていましたが、そのあたりも娘さんにはお話されたのでしょうか。

「私は、財布を与えない=パパ活をするのでは? という心配ではなく、先にお伝えしたように消費の感覚が狂ってしまうことに危険を感じています。

 思春期である高校1年生の子どもと、パパ活という“性行為”に結びついてしまうような話をするというのは、ものすごく困難です……。直接的にはパパ活という言葉を使ってはいませんが、言葉に気をつけながら、自分の思いを伝えました」

――おねだりを断られた娘さんは、少し泣いてしまったとのこと。今回の一件で親子関係にヒビが入ったりはしませんでしたか?

「特に関係に変化はありません。小さいころから会話をたくさんすることを心がけ、関係を築いてきたので、財布の件に関しても心から腹を割って話すことができました。今回の炎上の件も娘は知っているのですが、そのことも笑い合いながら話しました。

 あのツイートのあと、あらためて“本当にあの財布、ほしい?”と聞いてみたんです。そしたら“やっぱりまだいいや”と言っていました。よくよく考えるとデザインも心から好きなわけじゃないし、やっぱり高いし、自分が本気で可愛いと思えるものを探すね、と。

 娘との話し合いの結果、今回の誕生日はディズニーのチケットがいいということで、そちらをプレゼントすることになりました」

――普段からたくさんコミュニケーションを取っているからこそ、お父さんの思いが娘さんにも通じたような印象があります。いつもの父娘関係はどのような仲なのでしょうか。

「普通に仲よしですよ。2人で映画を観に行くこともあれば、スイーツを食べにいくこともあります。

 また以前から、“お父さんの誕生日に、バイト代で何かプレゼントを買ってあげるね”と娘が言っていたんですが、さきほど公言どおりウエストバッグをもらい、涙が出そうになりました。娘が私に対してどう思っているのかは、娘にしかわかりませんが、私は良好な関係が築けていると思っています」

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 子育てに正解はないが、こゆるぎ岬さんに話を聞くと、理想とも思える父娘関係が見えてきた。しかし、SNSではどんなことにも批判はつきもの。今回の件でこゆるぎ岬さんの元には〈こんなゴミでも結婚できるんだ〉〈娘にセクハラしてるだろ〉〈5~6万の財布を買えないのに子どもを産むな〉〈子どもは良い父アピールの道具〉といったような多くの誹謗中傷が。騒動を経て、最後にこんな思いも話してくれた。

「インターネットは誰もが自由に発言をできますが、ちょっと見かけたほんの一部のことで赤の他人を断罪して、追い詰め、社会的に抹殺できてしまうものなんだなと……。GUCCIを高1の娘に買い与えるか? だけで人格否定もできるし、子どもへの中傷もできてしまう。そういう時代の中、親子の人間関係を構築したうえでリテラシーを教えていくのも、教育として大事なことなのかなと思いました」

 多くの議論を生んだ今回の “GUCCIの財布”論争。もし自分が親の立場だったらーー。あなたは子どもに、どう答えただろうか。