「北朝鮮は何をやっても国連安保理が機能しないのはわかっていますからミサイルは撃つでしょうし、核実験もやると思います。ICBM(大陸間弾道ミサイル)の実験もするでしょう」(黒井さん)

中東・アフリカの深刻な情勢

 そしてより深刻になっていくのは中東問題だ。危険視されているのはイラン。出方次第ではイスラエルと戦争になるリスクも指摘される。特定非営利活動法人アクセプト・インターナショナルの代表理事でテロリストとの交渉や中東・アフリカ事情に詳しい永井陽右さんも指摘する。

NPO法人アクセプト・インターナショナル永井陽右代表理事
【写真】軍病院へ負傷者を訪問するウクライナのゼレンスキー大統領
 

「イランがサポートしているとみられるイエメンのフーシ派は国連安保理でテロ組織と認定されました。サウジアラビアやアラブ首長国連邦に対してドローンを使ったり、ミサイルなどで攻撃しており、状況は緊迫しています」

 そしてアフリカの情勢はかなり深刻なのだ。

特に内戦が続くエチオピアも状況は改善されていません。そしてサハラ砂漠あたりの国々は現地の武装勢力により国内の治安は悪化し、死者数も増えています。ソマリアやモザンビーク、コンゴでもイスラム過激派によるテロや攻撃が依然として続いています。アフリカの紛争地の多くは軍事面でも欧米諸国の支援があってどうにか武装勢力に対処できている状況ですが、この2年間は新型コロナの影響で欧米の支援予算が減少したりもしています」(永井さん、以下同)

 例えばソマリア。現在アフリカ連合の部隊が治安維持を行っており、例えば給料などをEUが負担しているが、継続は簡単ではない。

「ロシア・ウクライナを優先し、アフリカへの予算が後回しになれば部隊が縮小・撤退する可能性だってあります。専門家筋はアフリカ連合の部隊が完全撤退したら、昨年8月にアメリカが完全撤退後にタリバンがアフガニスタンを取ったようなことがソマリアでも起こるのではないかとかなり懸念されています」

 今後は国家間の戦争もテロとの戦争も両方が残っていく、と専門家らは懸念する。

「今後、世界的に原油や物資の価格が高騰するので紛争地や経済が脆弱なところにはより顕著に影響が及ぼされます。さらに生活が困窮し、経済がガタガタになり、不満からの問題が起こりえます」

 そこから武装勢力やテロリスト集団が生まれる可能性も十分に考えられる。

「難民の問題も当然出てきます。ウクライナからの避難民やロシア人も難民になる可能性は高い。避難民と難民それぞれへの支援について、日本として何ができるのか議論も必要です。そして今、国際社会が問われているのは武力に対して、武力でない形でどう対応し、戦争を止めることができるかなんです。それができなければ人類は1つ前の時代に戻る」

 これまで人類の歴史では武力に武力で対抗した結果、多くの血が流され続けてきた。

「SNSやデモなどで戦争反対を訴えることも必要です。ただ、そこではこうした惨状に至るまでの歴史や背景、そしてそれらをめぐる欧米や国際社会の対応などについても、しっかりと考える必要があります。感情的にならず、冷静になってそれを考えることが大切だと思うのです。そしてどんな未来を進みたいか、ひとりひとりが考える必要が今こそあります。絶望せず、私たちは人類が望む明るい未来に向かっていければと思います

 21世紀も戦争の世紀にしないためにも、改めて向き合っていかなければならない。

話してくれた人は…
●NPO法人アクセプト・インターナショナル 永井陽右代表理事
ソマリアやイエメンを中心にアフリカ、中東問題に詳しい。専門はテロ、紛争解決、人道的交渉、平和構築。テロリストとの交渉や脱過激化、武力解除などにも尽力する。

●NPO軍事ジャーナリスト 黒井文太郎さん
モスクワ、ニューヨーク、カイロを拠点に紛争地帯にて多くの取材経験を持つ。専門は日本の外交、安全保障や国際紛争やテロの研究。メディアの出演も多数。

●NPO国際政治学者 宮脇昇教授
立命館大学政策科学部教授。専門は安全保障論。ヨーロッパ問題に詳しく、日露戦争などの研究も行う。著書に『戦争と民主主義の国際政治学』(日本経済評論社)などがある。