黒井さんは「実はここ1か月くらいでガラッと状況が変わりました」と前置きをしたうえで説明する。

「ロシアのウクライナ侵攻前は台湾海峡や南シナ海の情勢は非常に危うかった。中国をどう封じるかというのがアメリカを含め各国にとっての大きな問題でした」

 前述の理由からアメリカの抑止力が効かないとなれば中国が実力行使に出る可能性は十分に考えられた。

 中国はロシアとタッグを組み、連合としてアメリカらと対峙するというシナリオを考えていたとみられる。

「今回のウクライナ侵攻でその動きは一時的に止まったと推測できます。ロシアは大義名分もなく犯罪的に侵攻をしたことで世界中から非難を浴びています。これでは中国の習近平国家主席もかばいきれない。今ロシアと手を組めば自分たちも世界中から非難されるだろう、と」(黒井さん)

在日米軍基地が攻撃される可能性も

 一方、宮脇教授の見解は、

「ウクライナの行く末に左右されます。もし、ロシアの思いどおりかつ被害が少ない状態で戦争が終結すれば、中国が動く可能性は高まる」

 侵攻が失敗に終わり、軍がクリミアを残して撤退することになれば、台湾海峡問題について中国も慎重にならざるをえなくなる。

「ベトナム戦争でアメリカが撤退した後や、ソ連のアフガニスタン侵攻の失敗後のような状況になりうるからです。戦争を起こさない、という意味ではいいと思います。今回、国際世論の感情を動かしたのはSNSでした。発信者にはロシア兵もおり、現場の兵隊がリアルタイムで情報を発信するというありえないことが起きている。情報漏れや人道被害が流れれば戦意も下がる。同じような事態が今後、ほかの国でも起きる可能性はあります」(宮脇教授)

 もっとも台湾海峡の有事が起きれば日本も無関係ではいられなくなるのだ。

「日本には在日米軍がいますので台湾有事は、同時に日本の有事です。在日米軍が台湾を支援すれば日本が戦争に直接加担しなくても沖縄や日本国内の米軍基地は攻撃されるでしょう。攻撃を受ければ日本有事なので、自衛隊が防衛出動します」(黒井さん、以下同)

ロシア、北朝鮮の脅威と第三次世界大戦

 7日、習近平氏は中国軍を海外に派遣して活動させる根拠法の整備を進める意向を示した。

「ロシアも脅威です。戦闘機や潜水艦といったロシア軍による牽制は増えると思います。日本だけでなく、ヨーロッパも国境が接する北欧でロシア軍が牽制する頻度が増えました。日本とロシアは敵対していないと思っていてもロシアから見た日本は敵国です」

 現にロシア政府は日本を「非友好国」に指定している。

「もし戦争にNATO軍が介入すればロシアとの第三次世界大戦になるかもしれない。日本は直接、戦闘に参加しなくても援助はするでしょう。在日米軍も戦争準備態勢に入ります。そうなると東アジアも緊張感は高まります。ロシアは遠くない国なんです」(宮脇教授)

 もうひとつの脅威は北朝鮮。