『堅あげポテト』は全国展開まで“12年”

『堅あげポテト』は、当然ながらあの“堅さ”を出すために製法がまるでほかと違う。

「普通のポテトチップスは、スライスしてから水やお湯で洗って、一定の色合いを出す調整をします。『堅あげ』の場合は、切ったイモをそのまま揚げる。堅さを生み出すためには洗ってはいけないんです。美味しさも出てこないし、堅さも出てこない。堅あげはすごく原料を選ぶ商品なので、使える原料が限られていた。また、生産する機械が望む品質に至っていなかった。そのため最初はじゃがいもの産地である北海道に機械を置き、そこだけでの販売でした。全国展開まで12年。下積みが長い商品です

 ヒット商品は、アイデアから製品化までどのくらい月日がかかるものなのか。

「『堅あげ』は、これでいくぞと腹を決めるまでには5年くらいだったと思います。5年は短いほうかもしれません。いろんな商品にいろいろなステージがあり、課題がたくさんある。原料の手当から生産のプロセスを整えるまでには5年や10年はかかってしまいますね。『ピザポテト』はわりと簡単にできましたが、量産化のシステムが完成するまでに10年ほどかかったと思います

1992年ピザポテト(最初の「ピザポテト」パッケージ) 写真提供/カルビー株式会社
1992年ピザポテト(最初の「ピザポテト」パッケージ) 写真提供/カルビー株式会社

 ヒットメーカーは、新商品を作るとき、何を考えるのか。

まずは世の中にないものを出したいということ。世の中にすでに出てしまっているものでも、そこに改良、改善をして新しく見せることも含めて、世の中にないものをと考えています。開発するうえでは、この商品は何のために存在しているのか、あるいはこの商品のよさは何かというところをしっかりと見極める。その商品を買っていただくための最大の特徴は何か。それをぶれることなく、品質を追究していくというところが、いちばん大事かなと思います

 なぜこれだけヒット商品を開発できたか。その秘訣は。

難しいですね(苦笑)。技術については絶えず網を張って見ておき、探していかなくてはダメだと思います。あとは人の意見をよく聞くことでしょうか。相手の感想、想いをまず聞くことが重要なことかなと思います。どこに共感してもらえて、逆に共感してもらえないのか。そこはよく聞くようにしています。

 もう1つは、そうは言いながら、ヒットを生むために必要なものというのは、やっぱりこだわりを持つことだと思います。『堅あげポテト』でしたら、“この堅さ”ですとか、『ピザポテト』だったらこの見た目ですとか、絶対に譲れないところがあるので、そこをしっかりと持つことですね」