職場での小杉さん(写真:筆者撮影/東洋経済オンライン)
職場での小杉さん(写真:筆者撮影/東洋経済オンライン)
【写真】入院中の写真。抗がん剤2クール終了後の小杉さん

 入院先にネット環境がなくてポケットWi-Fiをレンタルしたことや、患者として感じたことなどを中心に話すと、反響は大きかった。事後アンケートには「同僚の体験談として、お客様にもしっかりと伝えていきます」などと好意的な感想が多数寄せられ、やってよかったと思えたという。

「体験談を話すことは、入院中から考えていました。がん保険がなぜ必要なのかを伝える仕事をしている以上、2度も経験したことを社内に伝えなきゃいけないなって。カッコよく言うと使命感みたいなものですね」

 終始穏やかに受け答えしてくれていた彼はこのとき、きっぱりと言い切った。

 その後、小杉さんは、社内のがん経験者コミュニティーにも参加。ほかの人たちの話を聞く中で、病気の受け止め方は十人十色だと痛感させられる。

両立支援は制度整備と職場環境づくりが大切

 アフラック社内のがんを経験した社員コミュニティー「All Ribbons」は、2017年12月設立。2021年12月末時点で、30代から50代の男女22名が参加している。

 コロナ禍拡大以降は、オンラインで毎月活動中。人財戦略部と連携して活動していて、本人の希望を尊重して匿名性の確保や、秘密保持が保証されている。

 2021年6月にAll Ribbonsに参加した小杉さんは、ほかの経験者と話すことで、自身の視野も広がったと話す。

「たとえば、他社のがん経験者コミュニティーとの交流にも積極的な人もいれば、社内だけでいいという人もいます。私は気軽に『がんだったんだって?』と声をかけてほしいタイプですが、職場では病気の話には触れてほしくないという人もいます。改めてすごく繊細で、個人差が大きいテーマなんだと学びました」

 All Ribbonsのメンバーの声は、治療と仕事の両立支援の制度づくりにも反映されてきた。「取得できる休暇日数が足りなくなれば、会社を辞めなければいけない不安がある」という声などを受け、がん治療のための特別休暇「リボンズ休暇」(日数無制限)ができた。

 放射線治療など短時間の治療には、1時間単位の年次有給休暇やフレックスタイム制度も活用可能。在宅勤務なども含めて一連の制度はがんに限らず、どの社員も利用できる。

 がん経験者にとっての在宅勤務は、体力面の配慮だけにとどまらない。

「抗がん剤治療の副作用による脱毛などの見た目の変化や、術後の傷をかばいながらの通勤は、精神面でもストレスフルになることもあります」(同社人財戦略部健康推進室)