「監督が無理やり自分の望む芝居を指導し、そこでパワハラが生まれる。その俳優はお芝居を学ぶ健全な環境を与えられていないから、その現場で受けたパワハラ指導が、正当な演技のステップであり、当然と思い込んでしまう。監督もこの俳優は演技ができないから、自分が教えてやらなければいけないという勘違いをし、厳しく当たる」

 演技指導の名目で行われる罵倒や暴行。監督だけでなく俳優自身もパワハラを正当化してしまっていた。

女優を誘うのは“普通のこと”

「美談化され、そして武勇伝のようになってきた。自分が育ててやったかのように監督たちが自慢をする。そしてそれを聞いた若手の監督も、そういう演出がありなんだと覚え、現代社会で社会人としてありえないようなパワハラ行為が、なぜか映画界だけでは許されているという恐ろしい現実があるのです」

 これらは昔の話ではなく、現在でも行われていること。

「すごいよかったです。児童虐待、撮りました」

悪びれずにそのように話していたのは、'17年公開の『ヘドローバ』という映画の監督を務めた小林勇貴。作中、子どもが暴行されるシーンがあるが、演技ではなく実際に暴行が加えられており、メーキング映像では暴行場面が映されている。

 何度も平手打ちを食らった少年は、撮影直後、嗚咽が止まらず嘔吐。これを“宣伝”としてメーキング映像で公開することが、異常と捉えられないのが映画界。そこに対し、ようやく“異常だ”と声が上がってきたのが、今なのだ。水原希子は性加害について『週刊文春』の取材を受け、次のように話した。

《友人の役者さんから園氏はそういう(性加害の)噂があるから気をつけた方が良いと言われた事がありました》

 性被害・セクハラについてもパワハラ演技指導と同様の“意識”がはびこってきた。

「例えば監督やプロデューサーが女優を誘うのは“普通”のことであり、その誘いをかわす技術を持っていることが、当然であるというようなワケのわからない常識がある。セクハラをどうやって受け流すかというスキルを持っているべきである。持っていなかったらその女優さんが悪いというとんでもない考え方です」

 なぜ俳優たちはこれまで声を上げられなかったのか。

「俳優の立場が弱いことが1つ。そして俳優として、加害行為を行った人だけに迷惑がかかるならいいのですが、その周りの人にも迷惑がかかるというプレッシャーがある。また、加害者を守る圧力のようなものもあります」

 だが、相次ぐ告発で変化が。