ラストライブに「胸がいっぱい」

 そんなエリアの最後の日は2021年12月31~2021年元旦にかけて行われた。

  午後1時から始まる第1部を皮切りに、19時〜24時、25時〜28時までの3部制。合計14バンドがエリアの最終日を飾った。前出の蟹さんも高橋さんもカウントダウンを終え、明けて2022年1月1日未明に行われた最後となる第3部に入場した。

 2人にその様子を尋ねた。

「普段のライブですと目当てのバンドのTシャツを着ているファンが多いんですが、その日はエリアのオリジナルのTシャツを着ている人も多かったですね。エリアの最後を粛々と見守るバンギャも少なくありませんでした」(前出・蟹さん)

 第3部には『有吉反省会』(日テレ系・土曜・23:30〜)にも出演していた『ダウト』や『エリアの主』とも呼ばれていた『ウミユリ』のボーカルHitomiさんら5バンドが出演。深夜だというのに会場は大盛り上がり、アーティストもファンも全力で楽しんでいた。

「エリアの客席部分は三層構造になっているんですが、フロアの最後尾までみんなノリノリでした。最後にHitomiさんが“本当にここが大好きでした“と絶叫した時に涙が出ました。ああ、これで本当に終わりなんだな、ってそこでようやく終わるという現実を突きつけられました。

 また、その後、3部の出演バンドのボーカルたちがもう一度ステージに出てきたのですが、『ダウト』のボーカル、幸樹さんが“このエリアがなくなってもエリアバンドに代わりはない。僕にとってのエリアの思い出があるように君たち自身もエリアの思い出があると思うので、その君たちだけのエリアの思い出を大事に生きてもらえたら、と思います “という言葉も印象的でした。その言葉で私が手伝っていたバンドのこと、エリアで解散ライブをして、終演後メンバーとともにしんみりしたことを思い出しました。いろんな思い出が蘇ってきてもう胸がいっぱいで……」(前出・高橋さん)

 午前6時過ぎに終演を迎え、出演者がステージを去ってもなお、会場からはアンコールを求める拍手が鳴り止まなかった。その時間にも関わらず会場には多くの観客が残り、名残惜しそうに過ごしていた。

「終演後、多くのファンは思い出のある場所を撮影していました。本来、会場内での撮影は禁止ですが最終日だからかエリアのスタッフさんも目をつぶってくれたようです」(蟹さん、以下同)

終演後、ファンたちは片付けが行われるなか建物内の記念撮影を行なっていた。普段は撮影禁止だが、この日だけはスタッフも咎めることはなかった(読者提供)
終演後、ファンたちは片付けが行われるなか建物内の記念撮影を行なっていた。普段は撮影禁止だが、この日だけはスタッフも咎めることはなかった(読者提供)

 さらに入り口付近でも外観を撮影するため、多くのファンが集まっていた。

エリアはほかのライブハウスと比べてもお客さんと一線を引いており、馴れ合うことはない箱でした。例えば出待ちにしても、基本はどこのライブハウスでも禁止なんですが、エリアは特に徹底しており、終演後は会場周辺に溜まれないのはもちろん、建物の前に居ることすらできないので、終演後エリアを出たら小走りで離れるのが恒例行事。スタッフさんはこまめに声をかけていました

 それは住宅街と隣接する商店街という立地も関係していたとみられる。周辺からの苦情が増えれば営業ができなくなってしまう恐れもあったからだ。

「エリアといえばこの終演後のスタッフの声かけも有名でした」

 最後の日も終演後にスタッフが周辺で注意をして回ることを期待していたという蟹さん。しかし、その期待は裏切られることになる。